「女性皇族の夫が政治家」も可能に
しかし、皇族と国民は憲法上、大きく隔たった位置付けを与えられている。
天皇・上皇・皇族方は、皇統譜に登録され、憲法1章の“優先的”な適用を受けられる。そのため、同3章が国民に保障している自由や権利は、全面的もしくは大幅に制約されざるをえない。選挙権・被選挙権、集会・結社・言論など表現の自由、居住・移転・職業選択の自由、外国に移住し国籍を離脱する自由等々は、いずれもそのまま認められない。
これに対し、国民は戸籍に登録され、憲法3章の“全面的”な適用を受ける。上記の自由や権利を全て享有する立場だ。
したがって、女性皇族の結婚相手の男性が、政府プランの通り国民のままとされた場合、「日本国の象徴」であり、「日本国民統合の象徴」(憲法1条)であって、「国政に関する権能を有しない」(同4条1項)とされる天皇および皇室の憲法上のお立場を損なう危険性を否定できない。
たとえばプラン①について、国民の目からは内親王・女王と“一体”と見られるのを避けにくい夫が、政界からのアプローチなどによって国政選挙に立候補することは、憲法上、国民に認められた当然の権利だから、一切、制約されてはならない。その結果、国会議員になり、やがて閣僚として大きな政治力を発揮する可能性も除外できないだろう。つまり、愛子内親王殿下の夫が政治家になることも、理論上は可能になってしまう。
あるいは、お子様が芸能プロダクションにスカウトされ、タレントとして活躍することも、国民であればもちろん自由だ。
さらに、特定の宗教団体の“広告塔”として積極的に活動するケースも、憲法上は普通にありうる。それらを制限することは、明確に人権侵害であり、憲法違反に当たる。
一見、荒唐無稽な話のようでも、政府プランでは制度設計としてこうした可能性を排除できない。
プラン②でも、家族の中に国民が混在する場合は同様の問題に直面する。
皇室典範が守る皇族の「家族の一体性」
そもそも皇室典範には、皇族の“家族の一体性(=身分の同一性)”を求める明文規定がある。それは13条だ。少し長いが全文を引用する。
「皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除き、同時に皇族の身分を離れる。但し、直系卑属及びその妃については、皇室会議の議により、皇族の身分を離れないものとすることができる」
法律を読みなれていない人には、すぐにピンとこないかもしれない。わかりやすくかみ砕くと以下の通り。
皇族の家族において、何らかの理由(自らの意思や懲戒的な事情など)で夫(親王・王)が皇籍を離れる場合は、原則として妻(妃)もお子様など(直系卑属)およびその妻(妃)も同じく皇籍を離脱する(皆様、一緒に国民となられる)。
これは、まさに「家族の一体性(=身分の同一性)」が求められているから、と理解できる。