自分が老害にならないためにできること
そして、そのために大事なことが2つあります。
ひとつは、普遍的なコンピテンシー(成果につながる行動)を獲得すること。30代であれば、目標が設定できて、計画立案ができて、進捗管理ができるようになること。そういう汎用的な力があれば、仕事が変わっても会社が変わっても、生きていけます。もっといえば、会社に頼らなくても生きていけるようになります。
私が2015年に上梓した、あらゆる企業に共通する45種類のコンピテンシーを紹介した『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)という書籍は、発売から6年以上が経った現在でも重版され続けており、人事の本としては異例のロングセラーになっています。
これは、こうした危機感を持ち、自身を成長させたいと願うビジネスパーソンがたくさんいることの証なのでしょう。
会社が求めることは、年齢とともに変化していきます。現在の自分が求められていること、これから求められることを認識するのは非常に大切です。
「今」をどう生きるかが、今後を大きく左右する
もうひとつは、自分は「何屋」なのかを見極めていくこと。自身の強みや専門性を明確にすることは、30代以降の会社員には特に重要になります。
営業なのか、経理なのか、もしくはマネジメントという汎用性の高いスキルに特化するのか……。自分は「何屋」なのか、自身の仕事を要素分解して考えてみましょう。
その際に重要なのは、「他社でも通用するのか」を基準にして自身を客観的に顧みることです。社外の人と交流を深めて他社の話を参考にする、副業を試してみる、他社の面接に応募してみるなど、自身の力を客観的に判断する方法はいくらでもあります。そういった行動をすることが大切なのです。
他社でも通用する力があるなら、そのスキルをさらに磨いていく。通用しないと思ったら、今の会社で不足しているスキルを身につける。そうして今後の選択肢を増やしていくのです。
始めるのに「遅すぎる」ということはない
今の会社で上を目指す、転職する、起業する。どのような道を選ぶにせよ「今」をどう生きるかが、あなたの今後の人生を大きく左右します。
もちろん何かを始めるのに、遅すぎるということはありません。40代、50代でも、決して遅くはないのです。
私たちは70代まで働くことになるのかもしれません。この年代に学んだことは、たとえ50代になってゼロから何かを始めたとしても、その後の20年間を生きる術になります。
「老害」と呼ばれている人たちは誤解しています。私たちは働くことから逃げ切るなんてできないのです。自分の将来について改めて考え、生きる力を身につけていきましょう。
中高年の会社員は、こうして会社の外に向けた「行動」がとても大切です。行動を起こすか起こさないか、それがあなたの将来を大きく左右します。
そして未来の選択肢も、自ずと変化してくるのです。
「人事の学校」「人事プロデューサークラブ」主宰。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。著書に『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)などがある。