人事もなかなか抜本的な手を打てないのが現状
一方で、団塊ジュニア世代のベテラン社員がいなくなることによって、スキルの継承がなされなくなり、組織の中でスキルが空洞化してしまう問題も起こっています。
「老害」と呼ばれるやる気のない人たちもいれば、現在なお成果を出し、かつ伝承すべきスキルを持った中高年の社員もいる。後者のように、自分の強みを自覚し、技能や経験、人脈などの継承を積極的に行っている人が「老害」ではない「経験値が高い社員」です。
人事もそれはわかっていますから、経験値が高い社員には、専門職制度を設けたり、マイスターという称号を与えるなど、プロフェッショナルとして重用していく施策を行っています。ですが「働かない中高年」に関しては、なかなか抜本的な手を打てないのが現状です。
なぜなら給料を多少下げても、そういう人たちは会社を辞めません。再就職するのは厳しいうえに、たとえできても給料が下がる。だったら「妖精さん」になって居座るしかない。
そのうえ、企業には定年後の再雇用が義務づけられています。現在50代の社員が定年になる頃には希望者全員が65歳まで働けるようになります。政府は「人生100年時代」「1億総活躍」を提唱しており、2021年に「70歳までの就業確保に関する努力義務」が企業に課せられました。いずれは70歳定年が義務化されるでしょう。
働く当事者にとっては必ずしも悪い話ではありませんが、企業にとっては深刻な問題です。高齢化した社員みんなに高額な給与を払い続けていったら、経営は破綻します。
給料を下げればやる気も下がり、さらに老害化が進みます。それでも20代の社員より給料が高いことが多いため、若手のモチベーションも下がります。社員全体の士気が下がれば、当然業績も悪化します。こうした負の連鎖がずっと続いていく可能性があるのです。
必要なのは「外に出ても通用する力」
中高年の問題は、20~30代の社員にとっても決して無関係ではありません。業績が悪化すれば、会社は人員削減に踏み切ります。さらに特に大手企業において、業績がよくても45歳以上の希望退職・早期退職を募る企業も増えてきました。
評価の低い社員に対しては、年齢に関係なく、退職勧奨を行う場合もあります。会社が求めているのは、どんな企業でも通用する人材です。中高年の会社員は、今の会社で必要とされ続けるためにも、また転職という可能性のためにも、そして将来「老害」と呼ばれないためにも、「外に出ても通用する力」を身につけるしかないのです。