「仕事に雑用はない」は本当か
世の中には「仕事に雑用はない」「小さな仕事、ムダに思える仕事ほど丁寧に」なる考え方もあります。それでも専門外の仕事があまりに多すぎると、成果を上げる妨げになりますし、働く人がスキルを磨く機会を奪います。
「仕事に雑用はない」としても、「やらなくてもいい仕事」があるのは事実です。意味のない仕事をいくら上手にやっても、それは何の価値もないのです。本来優秀な人材が、確認業務やルーチン業務で気力と体力とモチベーションを奪われる景色は切ないものです。
「大丈夫です。私はルーチン業務が苦にならないですから」
「私は、押印も郵送もイラっとしないので問題ないです」
果たしてそうでしょうか? あなたや今の担当者は苦でなくても、引き継いだ別の担当者にとっては辛いかもしれません。また、取引先などの相手が苦労している可能性もあります。何より、事務作業や間接業務を温存してしまっていては組織全体の業務効率も生産性も上がりません。そのような仕事はなくすか、機械にやらせるのが健全でしょう。人間が人間らしい仕事にシフトする。プロがプロとして働くことができる環境をつくる。職場のギスギスを解消するうえでもきわめて大切です。
・海外の先進企業は、自部署や自分自身の得意でない仕事はあっさりと他の専門の部署に任せるか外注をするが、日本ではすべて自分たちでやろうとする傾向がある
・専門外の雑用が多いと、プロがプロとして成長できない職場になってしまう
・日本の職場はムダな事務作業や間接業務が多すぎる
・まずは削減、自動化、スリム化、外注化の余地がある業務を探すことから始めてみる
・管理部門の協力が必要なものは巻き込んで解決すると、より正しく、事務作業や間接業務をスリム化できる
1975年生まれ。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。「組織変革Lab」主宰、DX白書2023有識者委員など。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『問題地図』シリーズ(技術評論社)をはじめ、『新時代を生き抜く越境思考』(同社)、『職場の科学』(文藝春秋)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社)など著書多数。