転職で後悔しないための鉄則

こうした事態を防ぐためにも、転職する際はその企業をよく調査してから動くべきです。特に相手がベンチャーなら、その会社の事業だけでなく、業界自体に持続性があるのかどうか、今の勢いが一過性のものでないかどうか、成長性や将来性はあるか、同業他社の中で上位か下位かなど、事前に調べておくべき点はたくさんあります。

厳しいようですが、たとえばいったん業界下位の会社に入ってしまったら、そこから上位の会社に転職するのは至難の業です。「自分が成長させるんだ」という気概を持って、ベンチャー企業に入る場合は覚悟が決まった挑戦と言えますが、「とりあえず業界に入って経験を積んでから上位の社へ転職すればいい」という考え方で動くとしたら、特に歴史のある業界では非現実的と言わざるを得ません。

他の業界や他社との相対的な比較をしないまま、「せっかく声をかけてくれたから」「面白そうだから」「社長がいい人そうだから」と安易に転職してしまうと、後で後悔することになりかねないのです。

「声がかかりやすい年齢」を自覚する

まずは、自分が声のかかりやすい年齢帯なのだということをしっかり自覚しましょう。27~32歳はプラチナゾーンであり、求人がピークの時期なのです。そして、まだキャリアの第2期や3期を知らないことから、前述のような落とし穴にハマりがちな年代でもあります。

誘われたときは、自分個人にではなく「自分世代」に声がかかったのだと思うようにしてください。そうした認識を持っていれば、転職先をしっかり調べようという意識も芽生えるのではないでしょうか。

のちにミドルゾーンに入ってから後悔しないためには、声がかかっても「調査不足のまま動かない」が鉄則。特に今の職場に不満がない人は、より慎重に調査・検討してほしいと思います。

構成=辻村洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。