1997年からの10年間は特にひどい状況だった

【北見】勤続年数1年未満の人も含む勤労者が受け取った給料の総額は、1997年の220兆円が2007年には201兆円まで減り、10年間で約20兆円消えました。

文字どおり“消えた年収”です。そしてこの10年間で、年収300万円以下の人の割合は32.2%から38.6%へ6.4ポイントも増えました。この数字を見ると低所得者が増えて、いわゆる格差が開いた印象を持つかもしれませんが、実はそうではなく、年収1000万円超の人数も減っています。この期間は日本全体で低所得化が進んだのです。

私の地元の名古屋市は、この期間、自動車産業がけん引していち早く景気が浮揚したと見られていました。しかしそれは先入観であり、実態は異なることがわかりました。あの頃は新聞を開けば自動車関連産業の求人広告が溢れていましたが、少なからず驚いたのは自動車産業に従事する人の数は増えていなかったことです。

国税庁が発表する給与調査は、全国12の国税局ごとの集計や、おおまかな業種ごとの集計も行っています。これを見ると、自動車産業が含まれる「金属機械工業」の分野に従事する人数は、東海地方では100万人からほぼ横ばいで増えていません。

非正規雇用ばかりが増えていた

逆に「サービス業」は14万人増えていました。自動車関連工場に非正規雇用者を派遣する人材派遣業はサービス業に含まれます。要するに自動車産業で非正規雇用者ばかりが増えたと推測できるのです。

東海4県(静岡、愛知、岐阜、三重)を管轄する名古屋国税局管内でも、1997年から2007年までの10年間で、給料の総額は1兆3000億円減りました。

そして年収700万円を超えていた人の割合は17.4%から13.6%に減り、逆に、年収300万円以下の人は31.5%から36.6%まで増えました。総じて低所得化が進んだのです。しかし唯一、平均年収の上がった人たちがいます。それが5000人以上の事業所で働く男性です。大企業で働く男性はこの期間、人数こそ33万人から31万人まで減りましたが、平均年収は716万円から735万円まで増えました。名古屋における景気浮揚の実態は、ごく一部の人だけが享受したということなのです。