「大黒柱=男性」の呪縛は邪魔なだけ
子どもを多く生み育てようとすれば、夫婦が共に働いて家計を支えるしかないわけですが、男性が「働けば少なくとも自分が食べていく分だけは稼げる」可能性が高いのに対して、女性にはそうではない人が多くいます。働き続けても非正規雇用のままである場合も多く、その賃金では自分で自分を養い続けることすら難しいのです。
これは、日本が「大黒柱=男性」を前提とする社会であるからにほかなりません。人はいずれ結婚して、男性は働き女性はそのサポートをするものだ──。立谷市長の発言は、こうした昔ながらの家族像がいまだに根強い呪縛として残っていることを痛感させるものでした。
今は未婚化や晩婚化も進んでいますから、「男だから」「女だから」ではなく、一人ひとりが自分で自分を養えるだけの収入を得られる社会にしていかなければなりません。その意味では、昔ながらの家族像の呪縛は邪魔になるだけです。これを解かなければ、独身女性の老後貧困問題も男女の賃金格差問題も解消しないのではと思います。
独身が問題なのではなく、独身では食べていけないことが問題
しかし、家族像に対する呪縛は男女ともにあるものです。僕の知人の女性も、つい先日「うちの長女は40代なのにまだ独身で……」と気まずそうに話していました。今は未婚の人も増えていて全然珍しいことではないのに、まだまだ「独身=困りごと」と捉えている人が多いように感じます。
困るのは独身であることではないのです。問題は、独身であるがゆえに食べていけないこと、そしてそうした環境が特に女性に対していまだに続いていることなのです。
とりわけロスジェネ世代の独身女性には、働けば自分で自分を養えるという環境に入れないまま歳を重ねてきてしまった人が多くいます。非正規雇用のまま40代を超えると、何らかのスキルがない限り、どこかの企業に正社員として雇われるのは難しいものです。今の自由市場の中では彼女たちを救うのは難しく、老後貧困問題は今後もますます深刻化していくでしょう。