「老後のために2000万円の貯蓄が必要」と言いますが、貯蓄ゼロで老後生活に突入する人も少なくありません。60歳から老後資金を作るにはどうしたらいいか、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんが解説してくれます――。

※本稿は、長尾義弘『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

退職後のお金について考える男女
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60歳で貯蓄ゼロでも老後資金作りはできる

「老後資金を貯めないと老後生活が大変になるのはわかっています」

口で言うのは簡単。しかし現実問題、教育資金・住宅ローンという目の前の大きな支出で、なすすべもなく、貯蓄ができないまま老後生活に突入していく人はけっこう多いのではありませんか?

実際、60歳の4人に1人は、貯蓄が100万円未満という調査結果があります。

では、60歳で貯蓄ゼロの人は、悲惨な老後生活を送ることになるのでしょうか。そんなことはありません。60歳からだって老後資金を作るのは充分間に合います。しかも90歳の時点で1000万円の資金を残すことだって可能です。

では、どうすればいいのかを具体的に見てみましょう。

貯蓄ゼロでも老後資金を作る4ステップ

わかりやすくするために、野口(仮名)さんを例に4つのステップで60歳からの老後資金の作り方を紹介しましょう。

野口晶子(仮名)さんの家族は、夫の栄一さんと子ども2人の4人家族でした。夫の栄一さんは、中堅電機メーカーの開発課長として、またプロジェクトリーダーとして頑張っていましたが、仕事の激務と人間関係のトラブルから、ストレス障害になり、会社を退職することになりました。

妻の晶子さんは、商社の企画室で働くバリバリのキャリアウーマン。それまで、晶子さんは仕事と家庭の両立で、ストレスが貯まりっぱなしでしたが、夫が自宅で家事を全部するということになり、仕事に専念することができるようになりました。夫の病気のことはショックでしたが、自分が仕事に専念できる生活もいいかな! と思ったりしています。

さて、問題は家計の方です。それまでは、夫婦共働きだったので、パワーカップルということもあり、かなり余裕のある生活ができいきました。しかしこれからはそうはいきません。

50代の晶子さんに、住宅ローンと子どもの教育費が重くのしかかってきました。毎月50万円の給与があっても、家計は火の車。ボーナスで赤字の分をまかない、なんとかしのいでいくことの繰り返しで、とても老後資金を貯める余裕はなくなってしまいました。

59歳のときにやっと子どもたちが大学を卒業し、60歳で退職を迎えました。

中途入社だった晶子さんの退職金は800万円です。住宅ローンが750万円残っていたため、退職金で全額を返済。定年退職のお祝いにと、残りの退職金を使って温泉旅行に行きました。

では、その状況を踏まえて、今後どうすべきか解説しましょう。