夫婦共稼ぎのケースは、繰下げ受給をすると効果倍増?
専業主夫ではなく平均的な収入のある共働き夫婦の場合、女性の厚生年金の平均受給額は約11万円です(年額132万円)。野口さんの例に当てはめると、栄一さんの年金は年額210万円です。夫婦で342万円になりますが、年間の支出が400万円なので、58万円の赤字、月額約5万円の赤字です。しかも貯蓄ゼロですので、どのみち働くという選択肢が最善でしょう。
しかし、夫婦で年金の繰下げ受給をすると老後は、かなり豊かな生活が可能になります。
わかりやすくするため、70歳まで繰下げ受給をしたときに得られる増額だけを考えてみると次のようになります。
夫:年金210万円(65歳時点)×142%=298.2万円
妻:年金132万円(65歳時点)×142%=187.44万円
夫婦合計額:298.2万円+187.44万円=485.64万円になります。
つまり、年間約86万円の黒字です(月額7万円の黒字)。
さらに、65歳まで働くとしたら、その分の厚生年金が増額されるので年間100万円ぐらいの黒字を達成できると思います。
専業主夫の場合で説明してきたような、生活費を削るということなく、豊かな老後を過ごすことができると思います。また、高収入の女性(妻)の場合、遺族厚生年金は支給停止になるケースもあります。ですので、遺族厚生年金を気にすることなく、ご自分の年金額を繰下げ受給して、どんどん増額するほうが、1人になった時にも豊かに過ごすことができます。
年金受給額が多いほど、繰下げしたときの増額分も多くなります。ぜひ、繰下げ受給を検討してみてください。
高齢者施設を利用することも念頭に置いておく
さて、少々混乱している人もいるかもしれませんね。晶子さんがたどった家計の変遷を整理してみます。
晶子さんのプランでは、60代はレジャー費などを切り詰めていましたが、ステップ④ならば、70代から旅行などにも行けるかもしれません。70歳から、年1回の温泉旅行というのもできそうですね。
「旅行は身体が動くうちに行かないと」ですか。おっしゃるとおり。でも、いまどきの70代はお元気な方も多いと思います。
それに、忘れてはいけないのが介護の問題です。介護保険があるため自己負担は少なくなりますが、それでもお金はかかります。あるいは、終の住み処に高齢者施設を考えているなら、入居一時金や月額の費用はかなり高いと言えます。高齢者施設を利用する場合、毎月の支出が多くなってしまいます。年金の受給額を増やしておくことが、満足のいく選択へとつながります。
年を取ったらお金はあまり必要ない、とは言い切れません。何があるにせよ、年金の受給額は多いほうが安心です。
徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春出版社)、監修書には年度版シリーズ『NEW よい保険・悪い保険』(徳間書店)など多数。