企業人事部内でも「ダイバーシティ担当は女性」

こうした性別役割分担意識は企業の人事部にもあるのではないか。ダイバーシティ推進担当の多くは女性だ。女性がやること自体は悪くはないが、その後、人事制度企画、労使交渉の労政担当などを経て人事部長や人事担当役員になるキャリアステップが描かれているとは思えないし、実際に昇進しているのは男性が多い。

女性の活躍を促すには労組に限らず性別役割分担意識の払拭と中核業務を経験させるなど戦略的育成が不可欠だろう。

実は芳野さんが連合の新会長になった今回の人事も異例の出来事だ。従来の連合会長など三役は「役員推薦委員会」が産別労組の会長・委員長などの代表者(連合副会長)から選ぶのが慣例になっていた。しかし芳野さんは出身産別労組のJAMの副会長であっても産別の代表者ではない。また連合の副会長といっても女性枠だった。

前述したように産別労組の三役は現在も女性はゼロであり、これまでの慣例通りだと連合の三役はもとより、会長に女性が選ばれることはなかっただろう。

女性を常時登用していくには

連合は芳野新会長の誕生前に新たに「ジェンダー平等推進計画」フェーズ1(2021年10月~2024年9月)を作成している。その中で「Change(達成目標)」と推進すべき「Challenge(推進目標)」の2つに分けて計9つの目標を設定している。目標の中にはこれまでの計画で未達に終わったものもあるが、「執行機関への組合員比率に応じた女性参画の確保」などを盛り込んでいる。

さらに連合本部が必ず達成すべき目標として「2024年9月末までに、女性を常時上三役(会長・会長代行・事務局長)に登用し得る環境整備に、より主体的に取り組んでいく」ことを掲げていた。そしてこの目標設定後に奇しくも芳野新会長が誕生した。今回は三役就任が実現したが、女性を「常時上三役」に登用するには、今後も継続できる方式が必要になる。

どうしていくのか。連合幹部は「例えば連合奈良では副会長に女性はいませんでしたが、産別労組の副委員長も対象に含めるように規約の運用を少し変えたことで事務局長、会長になっています。そういう方法もあるのではないか」と指摘する。

つまり産別の副会長である芳野さんが会長になったように、産別の代表者以外の副会長、副委員長にまで候補者を拡大し三役候補者を選ぶという方式だ。実際に産別労組には副委員長、副会長を女性枠で据えているところも少なくない。もし実現すれば継続して連合の三役に女性が就任することになる。