産別労組の三役に女性ゼロ

一方、連合の第4次男女平等参画推進計画プラス(2020年10月~2021年9月)の数値目標である「女性役員を選出している組織を、遅くとも2017年までに100%とする」では、産別労組の33組織が達成しているが、11組織が未達だ。また個別の組合達成率は公務員労組は94.9%だが、民間企業の労組は58.8%にとどまっている。しかも産別労組の中核である会長および事務局長、書記長など三役の女性はゼロとなっている。

なぜ女性役員が少ないのか。その背景には産別労組や組合レベルでの女性執行委員の担当職務の偏りがある。連合の調査(「構成組織、地方連合会における女性の労働組合への参画に関する調査報告書」2020年)によると、産別労組の女性執行委員の担当業務は「男女平等・女性活動」担当が78.8%と圧倒的に多い。しかし、労働組合の中核業務といえる「賃金・労働条件」を担っている人は30.3%、「組織化・組織対策」担当は24.2%と少ない。加えて、担当業務の責任者になっている女性は最も多い「男女平等・女性活動」ですら39.4%となっている。

女性は男女平等の担当が多い割に、責任者の割合が少ないのが実態だ。

主流業務から外される女性たち

この傾向は個別の組合でも同様だ。労働調査協議会の「次代のユニオンリーダー調査」(2014年)によると、女性役員は男女平等の担当が最も多く、男性の業務は「賃金・労働条件」「安全衛生」「組織対策」などで女性を11~15ポイント上回っている。特に「賃金・労働条件」については組合のトップクラスの委員長、書記長など三役の男性の担当経験割合が8割超と他の業務と比べて際立って多くなっている。つまり、経営側との賃上げ交渉など組合の主流業務から女性が外されている実態が浮かび上がる。

階段に立っているビジネスウーマン
写真=iStock.com/PhonlamaiPhoto
※写真はイメージです

こうした状況について連合の元女性幹部はこう語る。

「労働組合の執行部の中に、男女平等は女性に任せておけばよいという性別役割分担意識があります。私も組合時代からなぜ女性に婦人部ばかり担当させるのか疑問でした。男性は若い頃から組織化を担当し、賃金・労働条件交渉担当を経て書記長へとステップアップし、産別労組の役員になると、さらにいろんな経験を積む。女性役員を継続させるには組合の役員の間に組織化戦略や政策、賃金交渉担当をやらないとスキルが身につかないし、ステップアップにつながりません」

男女平等担当を女性に任せきりにする弊害は女性のステップアップにつながらないだけではない。男性の経験が少なければジェンダー平等に対する理解が促進されにくいという弊害もある。