知らぬ間に“加害者”にならないように

噂話の被害者はどうすればいいのでしょうか。

見波利幸『平気で他人をいじめる大人たち』(PHP新書)
見波利幸『平気で他人をいじめる大人たち』(PHP新書)

実は被害者にできることは、ほとんどありません。

考えてみれば当然なのですが、噂話の当事者になることを避けるのは簡単ではありません。自分がそこにいないかのように、存在感を消して目立たなくしているしかないのかもしれません。でもそれだって万全じゃありません。どんなに存在感を消そうがどうしようが、存在していることは確かなのですから、何かの拍子に噂の的になってしまう可能性がなくなることはありえません。

ここで大切なのは、「被害者にならないように」と小さくなって生活することではありせん。むしろ、自分が加害者にならないように注意すべきです。

人生においては、知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまう、ということが往々にしてあります。噂話を広める行為はその典型かもしれません。

誰かから聞いた話を面白可笑しく尾ひれをつけてしゃべってしまった。それが噂の当事者にとって「会社を辞めたい」とか「死んでしまいたい」と思うほどに、追い詰められることなるとも知らずに。

もし自分が流した噂のせいで、誰かの人生が狂わされてしまったとしたら?

悪気はなかったのだけど……では済まされません。ですから、自分は噂話を広めるような人間にはならないようにしよう、という覚悟を一人ひとりが持つことが抑止効果につながると思います。

見波 利幸(みなみ・としゆき)
日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事

1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーなどを経て、98年に野村総合研究所に入社。主席研究員としてメンタルヘルスの研究調査、研修開発に携わり、日本のメンタルヘルス研修の草分けとして活躍。2015年より日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事に就任。20年かけて開発した2日間の「ヒューマンスキルを強化するマネジメント研修」は大企業を中心に絶大な支持を得ている。著書に『心が折れる職場』『上司が壊す職場』(以上、日経プレミアシリーズ)など多数。