長野東支店では「感動スタンダート」をもとに宮田が作成した資料(オレンジ色の用紙)で、唱和を行っている。
撮影=大井川茂兵衛
長野東支店では「感動スタンダート」をもとに宮田が作成した資料(オレンジ色の用紙)で、唱和を行っている。

部門間の「心の壁」を取り払え

3つ目は、職員同士のコミュニケーションをよくし、部門間の心の壁を取り払うことでした。「支店が1つの大きな家族になる」。そういうイメージです。職員数が15名というサイズ、まわりで何が起きているのか関心を持ち、不在の職員宛に来客があれば、目の前に抱えている仕事があっても、喜んでサポートに入る。

そんな関係を築いていくのに有効なツールになる、と考えたのが、「感動スタンダードメモ」の実践です。相手の仕事ぶりを褒めたり、感謝の気持ちを伝えるもので、常務理事の西澤の肝いりで、長野ろうきんにもこの制度が導入されていました。

互いに褒め合うことで気づき・一体感・信頼感などが育まれる。ひいてはチームワークが良くなる。そして、アイデアが出やすい雰囲気になる。このようなスパイラルが生まれていくことが見込めたので、茅野支店では毎月提出する「感動スタンダードメモ」の枚数を高めに設定しました。年間で1000枚。全職員でこの数字を達成してくれました。

また、支店長としては、各職員の気づきを受け止め、モチベーションの向上を促すツールとして活用しました。たとえば、こんなやりとりです。

ローン担当の職員のコメント。

「ろうきんと取引のなかった方がお見えになり、車のローンの申し込みを受け付けました。同じ職場の方から、ろうきんは対応がよく、スムーズに手続きができたよ、とアドバイスされたことがきっかけだったそうです。ありがたいことです」

私はそれにこう返しました。

「お客様の口コミの効果は大きいね。ろうきんは対応がよく、スムーズに手続きができた、というのは、担当の●●さんの対応がいいってことだね!」

この若手職員はカードローン担当をしていましたが、直接業務に関することだけでなく、「感動スタンダードメモ」を通して、私から多様な声がけができるわけです。

支店内の風通しをよくするために、表彰制度も実施しました。「感動スタンダートメモ」のエピソードを基に表彰する「感動スタンダード月間MVP賞」。対象者を選ぶのは、支店長の私ではなく、職員たちです。ほかに、「みんなに感動を与えたで賞」「お客様に喜ばれたで賞」といったミニ賞をつくって、成績が下位の人も表彰の対象になるようにしました。数字という「結果」だけでなく、あなたの仕事ぶりも見てますよ、頑張っているね、とエールを私から送るいい機会になりました。

こうした地道な取り組みを進めたことで、職員は自分たちが「店の主役を担っている」という意識に目覚め、主体的に働くようになったことが、大幅な業績アップへとつながっていくのです。その変化度は、私の想定をはるかに超えたものとなりました。

次回はその躍進ぶりについて、紹介していきます。