職員の行動指針が記されている「感動スタンダード」。これを毎日全員で唱和、実践することで、長野ろうきんの「目的(理念)」を追求し続ける。
撮影=大井川茂兵衛
職員の行動指針が記されている「感動スタンダード」。これを毎日全員で唱和、実践することで、長野ろうきんの「目的(理念)」を追求し続ける。

「指示待ち」のスタッフをやる気にするには

2つ目は、仕事を通して職員の意識を変えていくことです。

それまでは支店長や幹部から言われた通りにやることがよしとされていました。「指示待ち」で仕事をしていた職員に、「主体的に働いてください」と呼びかけても、戸惑うだけでしょう。そこで、職員が胸の内に秘めているだろう不満を解消することから始めることにしました。

「職場で改善してほしいことがあれば、遠慮なく言ってください」

すると、給湯器が壊れたままでお湯が出ないので買い替えてほしい。会議室の椅子の汚れがひどいので買い替えてほしい。駐車場の段差を改修してほしい……次々に要望が出てきました。

事情を聞いてみると、よく辛抱していたな、そんな不便な思いをしていたのか、というものばかりでした。私はこれらの要望にOKを出しました。そして、「みなさんがいいと思うものを選んでください」と、備品の選定などをすべて職員に任せました。それまでは支店長がすべて決裁していたのです。来客用のソファなどは女性職員好みの色調に新調され、どんよりした空気が漂っていた支店内が明るくなりました。それだけで気分が違ってきます。

さらに、女性職員から、お客様に好きな飲み物を選んでいただける給茶機をロビーに導入したいです、との提案が出ていたので、OKを出しました。業者・機種選定など本人がすべて担当し、機能・デザインに優れた給茶機を選定してくれたのですが、これが支店を視察に来た本部スタッフの目に留まり、全支店に導入されることになったのです。

「提案をしていい」→「それが認めてもらえる」→「仕事がやりやすくなる」「お客様に喜んでもらえる」→「やる気や自信につながる」。

こういう連鎖を体験することで、それまで「指示待ち」を当たり前と思っていた職員の意識が、どんどん変わってきました。お客様への応対にも気持ちが入っていくのが、ひしひしと伝わってきます。私は大きな手ごたえを感じるようになりました。