センスが表れる「面接官への質問」

転職活動では、常に何十人ものライバルがいると思ってください。自分の他にも面接を受けている人がたくさんいるわけですから、その中に下調べをしっかりしている人、例えば社長のインタビュー記事を読んでそれに関する質問をした人がいたとしたら、面接官の心にはそちらのほうが響くはずです。

事前に調べておけばおくほど、質問の内容は深くなります。やりとりも自然と充実したものになるでしょうから、面接官の印象に残る可能性も高くなるのではと思います。

では、休暇や福利厚生、年収に関する質問はどうでしょうか。これは複数の企業からオファーが来るようなスペシャリストならともかく、そうでなければ面接の場で聞くことではありません。

こうした質問は内定が出てからでも遅くはありませんし、後で人事担当者にメールで聞くこともできます。それをわざわざ、ただでさえ持ち時間の少ない面接の場で聞くのはもったいないと思います。入社後に自分に期待される役割や、今活躍している人の強みなど、聞くべきことは他にたくさんあるはずです。

例えば、面接を映画のオーディションだと想像してみてください。監督や演出家の前で、応募してきた役者が「稽古は何日間まで休めますか」「交通費は出ますか」「ギャラはいくらですか」などと質問したらどうでしょうか。

当然、やる気がないと思われるでしょうし、「まだ選ばれてもいないのに監督に何を聞いているのか」と落とされるのがオチでしょう。

企業の面接も同じです。特に面接の場に部長や課長が出てきているような場合、後で人事担当者に聞けばいいようなことを聞くのは、自分の損にしかなりません。

それは本当に今聞くべき質問なのか

自分は今、誰の時間を独占しているのか、選ばれるためには少ない時間の中で何をすべきなのか。面接で行う質問は、そうしたことをしっかり考えた上で投げかけたいもの。その意味で、転職者からの質問はその人のセンスが表れてしまうものでもあります。

面接は、相手が知りたいことを伝える場。35歳以上での転職活動を成功させるには、これを意識した上で準備することが大切です。

相手企業を調べる、面接官が知りたいであろうことを想定する、その「知りたい」に応える実績やエピソードを用意するなど、面接に備えてできることはたくさんあります。しっかり準備をして、多くの応募者の中から選ばれる可能性を高めてほしいと思います。

構成=辻村 洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1965年兵庫県生まれ、関西大学法学部卒業。1988年、リクルート入社。以降、30年以上転職サービスの企画・開発の業務に関わり、「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」HRプラットフォーム事業部部長、「リクルートメディカルキャリア」取締役などを歴任。2014年、リクルートを退職し、ミドル・シニア世代に特化した転職支援と、企業向け採用支援を手掛けるルーセントドアーズを設立。30年以上にわたって「人と仕事」が出会う転職市場に関わり続け、独立後は特に数多くのミドル世代のキャリア相談を受けている。著書に『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)、『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)など。