家族であっても「一期一会」

夫婦であっても親子であってもイライラしたり怒ったりせずに、丁寧にコミュニケーションをする。この何よりも大切なことを実践するために、ぜひ覚えておいてほしいのが「一期一会」という言葉です。

両足院の中からみる縁側
撮影=Hiroshi Homma

「一生に一度の出会い」という意味で使われますが、私たち人間は寝て起きたら、細胞が入れ替わって、また新しい人間に生まれ変わっています。ですから家族であっても、朝になったら新しい人に出会う、このモーメントはこの一回の出会いしかない。禅ではそういう考え方をします。前日の家族と今日の家族が同じように見えてしまうのは錯覚と言っても過言ではありません。

毎日、初対面でありつづけるためには、ぜひ「リチュアル」(お作法)をつくってください。リチュアルというのは、決まった行動をするなかで見方を切りかえること。お坊さんであれば、お線香をあげて、手を合わせてお経を読む中に感謝する癖がある。これがリチュアルです。家族間であれば、寝る前に必ず仲良しの印で握手をする、朝の挨拶は顔を見て「おはよう」と言うなど、身近な人がいちばん大切とわかる行動習慣を設計していくといいですね。

構成=池田純子

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職

京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。