役員の言葉で「このままではいけない」と自覚

その役員とはPR塾をきっかけに知り合った。お互いの話をするうちに、日本一のPR会社を作りたいというビジョンが、同じことが分かった。お互いの強みが違い、ビジネス的に補い強化しあえる関係だとも感じ、一緒にやることになった。彼は経営者としての経験も長く、会社が成長していく上で、絶対に必要な人だと感じていた。

現在の社員。
2020年6月に撮影した社員の写真。現在は、従業員16名。(写真提供=LITA)

その彼から「社長の器や人間性が大きくならないと会社は絶対に成長しない。会社が成長しなくてもいいのか? 今のままなら、一緒にやる意味がない。」と、きっぱり言われてしまったのだ。起業から3年後、本気で日本一を目指すなら私が変わらなければならないと痛烈に思い知らされた出来事だった。

同じ時期、笹木さんは人間学を探求する月刊誌『致知』に出合う。この雑誌でさまざまな経営者の体験談に触れたことが、いい組織のつくり方やリーダーのあり方、人材の育て方など多くの学びにつながっていった。

「学ぶにつれ、自分が間違っていたと強く感じるようになりました。今は仕事を通して社員と一緒に成長したい、お客様だけでなく社員にも喜んでもらいたいと強く思っています」

売り上げは昨年比5倍、5億を達成見込み

社名も、利他の心でやっていかなければという思いから『LITA』に変更。それから2年がたった今、退職者も大幅に減少し、事業も順調に拡大を続けている。コロナ禍でも需要が低下することはなく、売り上げは昨年比5倍、今年度の年商は5億を達成する見込みだ。

家族とすごす時間を大切にしている。
家族とすごす時間を大切にしている。(写真提供=LITA)

PRという仕事柄、本社は東京に置いているが、自身は愛知から東京への遠距離通勤とリモートワークでバランスを取りながら仕事をしている。社員も7割がリモートワークになり、その働きやすさから子育て中の女性が7割を占めている。

「お客様も社員も含めて、たくさんの人の役に立って、たくさんの人の人生を輝かせたい。今後は売り上げも、当社との出会いで幸せを感じていただける人の数も、すべてにおいて日本一を目指していきたいですね」

今はやっと土台ができ、日本一への階段を登り始めたところだそう。今までの困難を共に乗り越えてくれた役員は、現在も一緒に会社を支えてくれている。心強い仲間たちとともに、笹木さんの挑戦はこれからも続いていく。

文=辻村洋子

笹木 郁乃(ささき・いくの)
LITA 代表取締役

1983年、宮城県生まれ。山形大学工学部卒業。愛知県の自動車部品メーカーに研究開発職として勤務後、寝具メーカーのエアウィーヴや鍋メーカーの愛知ドビーでPRを担当し、売上拡大に貢献する。2016年に独立し、翌年PR会社を設立。企業向けのPR支援や、経営者や個人事業主にPRスキルを伝える「PR塾」などを展開している。著書に『SNS×メディア PR100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『0円PR』(日経BP)。