いいおじさんの多くは女性差別主義者

【田嶋】でもこの前『そこまで言って委員会NP』で会った時なんか、平身低頭よ。すごくいい人になっていて……。

【アル】いい人になってるんですか。

【田嶋】もともといい人なんだろうけどね。男性のいい人は、うっかりそのまま生きてると女性差別主義者なのよ。だって男は1番で育てられてきて、女は2番手だと決めた文化の優等生なんだから。普通にいいおじさんの多くは女性差別主義者よ。本人たちはなかなか自覚してないと思うけど。結局は、差別は構造だから。構造だということは、社会の、文化の、隅々にまで行き渡っているということ。例外はないの。

【アル】いまだにテレビ局は女性の役員がゼロとか1人とかですもんね。先生は今よりもっと古臭い男社会だったテレビで闘ってきたんですよね。ひどいバッシングをされて、胃が痛くておかゆしか食べられなかったって。

【田嶋】当時、女の人は人前で怒っちゃいけなかったからね。だから私なんてものすごく嫌われて悪口ばかり書かれたんだけど、それでも頑張ろうと思ったのは、尊敬するフェミニストの駒尺喜美こましゃくきみさんが「テレビは拡声器だから」って言ってくれたから。当時は視聴率1%は100万人と言われていて、「あなたが学者として本を書いても2000部。でもテレビはもっとたくさんの人に届くから」と言われてね。当時、「テレビタックル」は視聴率20%台を取っていたしね。

【アル】先生はたくさんの女性を救ってきたと思います。

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写真=iStock.com/hocus-focus
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人前で「田嶋さんのファン」とは言えなかった

【田嶋】ときどき電車の中で女の人がそっと寄って来て「よく言ってくれました」って泣き出したりしてね。でも男の人のいる前では「私、田嶋さんのファンです」とか「よく言ってくれました」とか絶対言わないの。芸能界の女の人でも、隠れてこっそり来て「先生、実はファンなんです」とかね(笑)。

【アル】そんな隠れキリシタンみたいな。

【田嶋】そりゃ男の人の前で私のファンですって名乗りを上げるのは男社会に背くことだから、言えないよね。私はそういうこと全部わかってたから、孤独を感じることは一切なくて、「ああ、みんな頑張ってるんだ」と思っていた。

【アル】優しい……。今はSNSで田嶋先生のファンだって公言できるし、この本おすすめ! とかシェアできますよね。そうやって声を上げても直接殴られない場所、匿名でもフェミニストとして発信できる場所ができたことは大きいですよね。

【田嶋】ああ、なるほどね。私自身はめちゃくちゃに誹謗中傷されたけど、なかにはそうやってちゃんと受け取ってくれた人もいた。一粒の麦じゃないけど、それだけでいいと思うの。ちょっとぐらい苦労しても、ありがたかったなぁと思うよ。