男だって変わっていく
【田嶋】当時テレビを見た男の人はみんな私のことが大嫌いだった。でもね、今はあなたのように40代ぐらいの男の人が嬉しいことを言ってくれるの。この前も銀座のカレー屋さんで男の人が来て「子どもの頃、先生のテレビを親と一緒に見てました。すごく勉強させてもらいました」って。あと「大人になって先生の言ってた意味がわかりました」とかね。
【アル】嬉しい……! そういう明るい変化もありますよね。たとえば子育てにちゃんと関わる男性が増えたりとか。友人の兄は、もともとあだ名が男尊女卑丸というぐらい男尊女卑だったんですよ。でも今は娘2人を育てていて、医大の不正入試の件でめちゃめちゃ怒ってたって。「このままじゃダメだ、日本を変えないと」みたいな。超手のひら返しだけど(笑)、そういう手のひらはどんどん返してほしいです。
【田嶋】ああ、いいねえ。やっぱりそういう人を見ると人間を信じられるよね。それが一貫してくれるといいね、自分の娘のことだけじゃなくて。
【アル】すべての問題はつながってるってことですよね。
【田嶋】そういうこと。ところが、そのお父さんが不正入試に怒る一方で、娘さんには女らしくしろと言って、青信号と赤信号を一緒に出していたら、娘さんは私のように苦しむことになると思うよ。そんな苦しみは誰にもしてほしくない。
【アル】進みながら止まれって、無理なトンチですよね。これからの子どもたちのために、私たちの世代が頑張らなきゃと思います。たとえば大学生にはジェンダーの授業が大人気で、今の若者はジェンダー意識が高いんですよ。
【田嶋】素晴らしい。
若者が社会で潰されないように
【アル】私たちの役割は、そういう子たちが社会に出た時、潰されないように、ちゃんと盾になること。上には石原慎太郎みたいな人がいるわけじゃないですか。慎太郎みたいなおじいさんは変わらないから、その間にいる中年が盾になって守らなきゃいけない。そのために男社会に迎合するんじゃなく、抵抗していくぞ! と思います。
【田嶋】あなたのような人が先輩にいれば、若い人たちはどんなに心強いか。
【アル】私にとっては田嶋先生が心強い先輩でありお手本でした。先生の言葉で大好きなのが「フェミニズムなんて言葉を知らない人でも、フェミニズムの生き方をしている人もいる。勉強した長さじゃないの。その人がどうありたいかなの。だからフェミニズムで人を差別しちゃいけないし、されてもいけない」。
【田嶋】そのとおりよ。社会の片隅にひっそり暮らすおばあちゃんがね、まったきフェミニストだったりすることがあるわけよ。それは教えられなくても人間が生まれながらに持っている人権意識を生きた結果だよね。
【アル】私は大学で女性学とか学んだわけじゃないし……と思ってたけど、フェミニズムって生き方なんだと思いました。
【田嶋】勉強も大事だけれど、自分を見つめる力だよね。だって人から与えられた思想を生きるってことは、そうすべきだとか、自分をそこに合わせることでしょ? それは違うんだよね。私は失った自分を取り戻したくて一生懸命生きてきた、書いてきた、考えてきたと思う。
【アル】うおお……励まされます(涙)。めっちゃ元気が出ました。
【田嶋】ありがとう。
【アル】憧れの先輩に会えてお礼も言えたし、私も一生懸命生きて書いて考えて、長生きしたいです!
神戸生まれ。著書に『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』『モヤる言葉、ヤバイ人』『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』他、多数。
元法政大学教授。元参議院議員。英文学・女性学研究者。書アート作家。シャンソン歌手。女性学の第一人者として、またオピニオンリーダーとしてマスコミでも活躍。津田塾大学大学院博士課程修了。イギリスに2度留学。『愛という名の支配』『ヒロインはなぜ殺されるのか』『我が人生歌曲』など著書多数。