前回、コロナバブルについて話してくれた代々木ゼミナールの人気講師・蔭山克秀さん。「30年前、すさまじい天国と地獄を経験しその後遺症にいまだに苦しむ私たちにとって、バブルは大いなる心の傷、日本人のトラウマ」だと断言します。そこで今回は同じ轍を踏まないための教訓として「世界のバブルの歴史」をおさらいしましょう——。
伝統的なオランダの風車がある風景
写真=iStock.com/Olena_Z
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史上初のバブルはオランダの「チューリップ・バブル」

スコットランドのジャーナリスト・マッケイは、1852年に邦題『狂気とバブル——なぜ人は集団になると愚行に走るのか』を著しました。原題直訳は『常軌を逸した集団妄想と群衆の狂気』で、そこにはバブルの歴史だけでなく、人類の集団心理が引き起こした愚行の数々(魔女狩り、十字軍、ノストラダムスの大予言、毒殺や決闘の流行、錬金術など)が収められています。これらを読むと、私たちのご先祖様がいかに愚行を重ねてきたか、そして私たちがいかに何も学んでないのかが、よくわかります。

さてバブルに話を戻しますが、本書には、人類がかつて経験した3つのバブルが掲載されています。16世紀オランダの「チューリップ・バブル」、18世紀フランスの「ミシシッピ計画」、そして同じく18世紀イギリスの「南海泡沫事件」です。

まず「人類初のバブル」とされるオランダのチューリップ・バブルについて。これはトルコから入ってきた珍しくも美しい植物に人々が熱狂し、価格がどんどん高騰していったお話です。最初は金持ちから始まったブームが中産階級まで広がり、人々は次第に、自分がチューリップを買うのに、どれだけの財をつぎ込んだのかを競い合うようになっていきます。その後もチューリップへの投機熱は、どんどん過熱し、ブームが最高潮に達した頃には、球根1つを4.8ヘクタールの土地と交換したという話や、球根を玉ねぎと勘違いして食べた外国人の船乗りが逮捕されたといった話まで出てきました。

しかし、さすがにここまでくると、分別ある人たちは「今の状況はおかしい」と気づき、売り始めます。すると市場はパニックになって売り注文が続出し、価格はすごい勢いで下がり始めました。売買契約をめぐるトラブルも増えましたが、裁判所はチューリップ投機を「契約ではなく賭博」とみなし、介入を拒みました。このようにして、チューリップ・バブルはオランダ経済に深刻なダメージを与えつつ、はじけていったのです。