奇想天外なことは考えないほうがいい
積立投資が合理的に報われる理由は、対象資産が成長する合理性を前提とする場合のみであり、逆に専ら需給が価格決定要因となる対象資産なら、将来価格が上昇する合理的理由がなく、ゆえに積立投資をしていても偶然性に賭ける投機的行為でしかないのです。仮想通貨だけでなく、たとえば純金などのコモディティも同様で、価格が倍になったとしても地球上のゴールドの量は何ら変わらない。単なる価格の上下にすぎません。純金積み立ても長期的に右肩上がりでの価格上昇期待を合理的に見いだせる対象資産とは言えず、本来的には積立投資に適さないのです。
普通の生活者が長期資産形成を目的とするならば、あまり奇想天外なことは考えずに、株式や債券など新たな富を生み出す一般性資産をポートフォリオに組み入れた投資信託を、毎月コツコツと定額で積み立てていくことが最も合理的で最適な行動手段なのです。政府が普及に向け尽力している「iDeCo」や「つみたてNISA」の制度設計意図も汲み取りながら、将来に向け真面目に取り組んでいきましょう。
1963年生まれ。東京都出身。明治大学卒業。1987年、現在のクレディセゾンへ入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾン インベストメント事業部長を経て、2006年にセゾン投信を設立。2023年6月に代表取締役を退任。セゾン文化財団理事。著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)などがある。