「長期で持っていれば大丈夫」という勘違い

しかしながら、まだ長期資産形成においての根本的な誤解も根強く残っています。それは「長期で持っていれば大丈夫」という偏った解釈です。投資信託などを販売している多くの金融機関でも、昨今は壊れたテープレコーダーのごとく「この商品は長期で」と繰り返し説明がなされているため、現状下落している商品でも、とにかく長期で持っていれば期待した結果が得られると思い込んでいる人が少なくないのです。

長期保有していれば何でも一様に報われる、など決してあろうはずがありません。長期投資で合理的な運用成果を得ることへの論拠として最も重要なのは、投資対象が将来において継続的な成長を見いだせるものであることです。ここで重要になるのが「再現性」という点です。投資対象の成長にしたがって長期的に価格が適正水準に向け収れんしていくことは、再現性を想定できます。他方、投資対象の成長がなくても、価格上昇で儲かることがありますが、それは合理的再現性に立脚したとは言えず、たまたまの偶然性と言わざるを得ない。ここに大きな違いがあるわけです。

仮想通貨の積み立てはどうか

さて長期投資を継続させるために有効な行動手段として、少額ずつ定期的な積み立てによって定額で資金投入する手法が前述の報告書でも提唱されて、金融機関も当たり前のように投資信託を積立購入することを勧めるなどで、積立投資は世間に定着し始めています。

積立投資は購入価格を平準化させ、長期保有を促す行動経済学的効能があることが、何よりの有効性と言えましょう。

ビットコイン仮想通貨の動向グラフとチャート
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ところが、今はやりの仮想通貨を対象として積み立てで購入していこうと考える人も出てきているようです。無論高値づかみを抑制する時間分散効果はありますが、仮想通貨をずっと保有していれば価格上昇していくという合理的根拠は、今のところありません。現状ある仮想通貨には実体経済を構築している実物資産の裏付けがなく、価格は短期的のみならず長期的にも買いと売りの総額の差で決まる需給のみで動いています。ビットコインなど、イーロン・マスク氏のコメントだけで乱高下するといった、予測困難なランダムな動きを激しく繰り返すこともあります。これが裏付け資産を持たぬ仮想通貨の特性でもあります。ものによっては、不人気が定着して価格がゼロに向かって下がり続けることさえあり得るでしょう。