ビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維などが心の不調に影響する

「心の不調を防ぐには、まずは食事を見直すことがポイント」と、功刀教授は言う。

ふだんの食事について、次の項目をチェックしてみよう。当てはまる項目が多いほど要注意だそうだ。

□加工肉やファストフード、スナック菓子、精製小麦でつくったパン、白砂糖、味付け乳飲料をよく食べたり、飲んだりする
□野菜や果物をほとんど食べない
□1日1食、もしくは2食しか食べない
□毎日のように外食をしている
□偏食または拒食である

出典:功刀浩監修『うつぬけごはん』(扶桑社ムック)

ファーストフード
写真=iStock.com/bymuratdeniz
※写真はイメージです

「現代の日本人は食事が西洋化し、カロリー過多になっているうえ、精製や加工された食品を食べることが多い。その結果、食物繊維のほか、葉酸などのビタミン、鉄などのミネラルといった栄養素が不足しやすいのです。例えば、鉄はミネラルの中でもっとも不足しやすく、閉経前の生理出血のある女性の2人に1人が、体内に貯蔵されている鉄が不足しています」

こうした栄養素は、心の健康とも大きくかかわっているそう。そのため心の不調を予防・改善するには、心をポジティブにしてくれる栄養素である、以下の「タシテヨ」を含んだ「ポジティブ・フード」を摂るよう心がけたい。

●タ……タンパク質(アミノ酸)
●シ……食物繊維、ビタミンC
●テ……鉄分
●ヨ……葉酸

「内臓や筋肉など人の体をつくるタンパク質はアミノ酸で構成され、アミノ酸は学習や記憶につながるドーパミンや、元気を出すノルアドレナリン、気分を安定させるセロトニンといった、行動や気分に指令を与える神経伝達物質をつくるもととなります。そのためアミノ酸が不足すると、心の不調に陥りやすくなります。

さらに、アミノ酸から神経伝達物質がつくられる過程では、ビタミンCや鉄、葉酸が不可欠です。また、ビタミンCは鉄の吸収を助け、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰な上昇の抑制にもかかわっています。

実際に、われわれが行った日本人約1万2000人の調査では、うつ病患者は、非うつ病患者と比べると鉄欠乏貧血の割合が高く、うつ病でない人たちの中でも、鉄欠乏症貧血の人はストレス症状が高いことが明らかになりました。

そして、食物繊維は腸内細菌のエサになる。そのため、食物繊維が不足するなどして腸内の善玉菌が減ると、腸壁に隙間が生じやすくなり有害なものなどが体内に侵入。血液を通じて脳に障害を起こします。逆に、腸内の善玉菌が多いと消化管と脳をつなぐ迷走神経が刺激され、ストレス反応をやわらげることがわかっています」