両理論とも、日本の女性の家事・育児負担が大きくなると予想

分業の理論と交渉の理論について見てきましたが、これらの理論から、日本の家庭における家事・育児の時間配分はどのようになると予想されるでしょうか。

日本では依然として男女間賃金格差があり、女性の所得水準が男性よりも相対的に低いため、いずれの理論からも「女性の家事・育児時間が多くなる」と予想されます。

この理論の予想と日本の現実は合致しているように見えます。

これらの理論のポイントは、経済力、特に夫婦間における相対的な所得水準の高さが家事・育児時間に影響を及ぼす点です。

いわば、「お金稼ぐ方が家事・育児しなくてもいいよね」という主張に理論的根拠を与えています。

冒頭の「俺よりも稼げたら家事をやるよ=俺よりも稼ぎが少ないんだから家事はお願いね」という話は、あながち間違いではないというわけです。

ここまで読まれた読者の方の中には「経済学はなんて冷たいんだ」と思われるかもしれませんが、少し待ってください。

妻が稼ぐようになれば、本当に夫は家事をするのか

このような理論から得られた予想が本当に正しいかどうかは、実際のデータを見てから最終的な判断を下した方が良いでしょう。

そこで、実際にデータを使って、「夫婦で同じ額を稼ぐようになれば、夫の家事・育児時間も大きく増えるのか」という点を見ていきたいと思います。

経済力が重要なポイントであるならば、夫婦それぞれの稼ぎが同じになった場合、家事・育児時間も夫婦間で均等になりそうです。

はたして実態はどうなのでしょうか。