分業の理論=夫婦それぞれが得意分野に特化する
さて、ここから理論の話になっていきます。少しだけお付き合いください。
家庭内における家事・育児時間の配分に関する理論の1つ目は、「分業の理論」です。
この理論はそもそもなぜ人々が結婚するのかという点を説明するための経済理論なのですが、家庭内における夫婦の家事・育児時間の配分を説明するのにも役立ちます。
分業の理論のポイントは、夫婦それぞれがパートナーよりも得意な分野に特化することで、独身時よりも多くの生産物を生み出すことができると指摘している点です。
最もわかりやすい例は、「夫=仕事、妻=家事・育児」という組み合わせです。
男女間賃金格差が大きい社会の場合、妻よりも夫が外で賃金労働に従事した方が世帯所得の上昇に寄与します。これに対して、妻は夫が外で働くぶん、家事・育児全般を担当することになります。
交渉の理論=夫婦間で交渉し、さまざまな配分を決める
2つ目の理論は、「交渉の理論」です。
この理論は家庭内におけるさまざまな資源配分の決まり方を説明するための経済理論であり、その中に家事・育児時間の配分も含まれています。
交渉の理論のポイントは、家庭内の人々(主に夫と妻)がさまざまな資源配分のあり方を決定する際、「経済力が交渉力の強さに反映される」と考えている点です。
平たく言えば、「お金を多く持っている方が自分に有利なように家庭内の資源配分を決めることができる」というわけです。
一般的に余暇と家事・育児では後者の負担が重いため、家庭内で所得水準が高い人ほど、家事・育児時間が少なくなると予想されます。