黙っていても口コミしてくれるアンバサダーたち
そしていまでは、ムーギーを使った料理教室や、キングジムの「ちいさく持てるマスキングテープKITTA(キッタ)」とのコラボイベント、そして女性限定の「ファンミーティング(ファンミ)」なども開催するようになった、とのこと(リアル、バーチャルとも不定期開催)。
ファンミは文字通り、ムーギーのある暮らしについてひたすら熱く語るイベントだそうで、「ありがたいことに、本当に好きな方は、二度も三度も応募してくださる」と、マーケティング部ブランド担当の嶺岸秀匡さん。
「私たちが黙っていても、彼女たちが自発的に『ムーギーっておいしいよ』と口コミしてくれる。まさに、アンバサダーですね」
アンバサダーでよく知られるのは、ネスレ日本の「ネスカフェアンバサダー」でしょう。ネスカフェ ドルチェグストなどのコーヒーマシンを、同社の商品やサービスに共感する生活者(アンバサダー)を通して職場に無償提供(貸与)することで、「ネスレのコーヒーっておいしいよ」と普及活動をしてもらおう、との試みです。
爆発的に売れるわけではないが、長く成長する商品
ほかにも、以前ご紹介したワークマン(SNS戦略)や、ユーザーと共に商品開発を続ける無印良品の「IDEA PARK」、ユニクロやジーユーの着こなし発見アプリ「StyleHint」などは、ユーザーの自発的な投稿やアイデアを活かしながら、彼らと共に、新たな商品やサービス、コーディネイト等の展開を考えていこうとする試みです。
ムーギーのような商品は、他の定番商品のように大量にドンと売れるわけではない。ですがお金をかけずに手作りの温もりを活かしたり、地道にPRを続けたり、あるいは着実にファンを増やしていくことで、結果的には長く愛される商品へと成長していきます。
こうした商品開発に欠かせないのは、効率よりも「こんな商品や世界観を、自分自身で創りあげたい!」とこだわる、作り手の情熱。そして多少のリスクはあれど、その思いを受け止める上層部の覚悟でしょう。そこに共感するユーザーこそが、いつの日かブランドのアンバサダー、あるいはエバンジェリスト(伝道者)になってくれるはずです。
立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。