日本食とは切っても切れない関係

「和食;日本人の伝統的な食文化」は2013年12月4日ユネスコの「無形文化遺産」に登録されました。そのおかげもあってか、日本食はヘルシーでおいしいと今では世界中の注目の的です。その日本食の要が発酵食品。みそ、しょうゆ、酒、酢、みりんなどの調味料はすべて発酵食品です。

スーパーなどで、なんとなくなじみのある調味料を使っている方がほとんどだと思います。でも、実はそれぞれ地域によって原料が違い、蔵独自の製法によって色も味も香りも熟成時間も異なる、とても奥深い世界なのです。

みそやしょうゆにも、日本酒のようにさまざまな種類があると言えばわかりやすいでしょうか。北に行けば塩辛く、南に向かえば甘い。真ん中は中間的な味をつくりつつも白かったり、真っ黒だったりと極端で、とても魅力的な世界がそこにはあります。

ところが、1990年代ころには、発酵食品は臭いし、しょっぱいし、色も渋いものばかりで、古臭いというイメージで敬遠され、汁ものの定番はコーンスープに移行しました。

「田舎のおばあちゃんが作るもの」というイメージが強い手づくりの発酵食品よりも、機械的な大量生産、塩分控えめで臭わない簡単便利な食べ物が好まれ始めました。

人間の危機を支えてきた発酵食

それが、昨今見直されてきました。きっかけは、東日本大震災。

昨日まで普通に生活を送っていたのに、あのとき突然、すべてが流されていってしまいました。そんなときに重宝されたのがおみそでした。おみそは保存性も高く、常温でも置いておけます。お湯で薄めればおみそ汁になり、食材につけておけば、腐りにくくなるし、柔らかくおいしくもなります。

さらに素材の栄養素におみその栄養素が加わるので、栄養満点。それにもかかわらず、すでに発酵によって分解もすすんでいるので、体はエコモードでその栄養を取り入れることができます。

みその原料である大豆は畑のお肉と言われる高たんぱくなので、いざというときには底力が湧いてきます。実は発酵と災害の関係は今始まったことではなく、東京が焼け野原になった東京大空襲、古くは戦国時代にも同じようにみそが重宝されたそうです。

そういった非常食としての側面に加え、さらには飽食時代の栄養素不足や食の安心安全が注目される時代背景も手伝ってか、発酵ブームが本格始動しているようです。