志半ばで会社を去った人事課長

じつは彼女自身も会社が推進する働き方改革の先頭に立つリーダーの1人だった。ノー残業デーの実施や子育て中の女性社員の働きやすい環境づくりに向けて、人一倍熱心に取り組んできた。筆者も何度か取材に訪れ、他社に参考になるような制度を紹介したことがある。

彼女が抜けることで今後の女性施策や働き方改革が遅れることにならないのかと心配した。彼女もこう言っていた。

「業務の効率化など、やるべき施策や課題は山積していましたし、途中で投げ出すことで遅れるかもしれません。でも一方では、今回のリストラによって私たちが苦労して取り組んできた働き方改革っていったい何だったのだろうという思いもあります。結局、同じ生産性向上でも会社はリストラによる生産性の向上を選択したということですから。後輩の女性社員たちがやる気を失わないだろうかというのが唯一の気がかりです」

彼女の疑問はもっともだろう。働き方改革の目的は社員の満足度を高めることで究極的には生産性の向上にある。そのためには一つひとつ積み上げていく地道な取り組みこそ重要だ。リストラは短期的には経営にとって大きなメリットがあるかもしれないが、残った社員のモチベーションの低下など中長期的な生産性のリスクも抱えている。

今回の一連のリストラでも、彼女と同じ思いを抱いて会社を去って行った女性も多いのではないだろうか。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。