30歳、やりがいを求めて未開拓の「派遣業」へ
営業の売り上げを伸ばして実績を積み、30歳のときにマネージャーに任用。部下を指導する難しさはあっても、仕事は充実していた。だが、10年経った頃、ふと自分を顧みた。営業は楽しかったが、住宅や不動産自体にあまり興味をもてないことを感じていたそうだ。
平田さんは異動を希望して、通販事業部へ。マーチャンダイジングに携わり、2002年に出向したのがリクルートスタッフィングだった。人材ビジネスは初めての経験で、派遣業は法律に縛られる厳しさもあるため苦労したが、2年間の出向が転機となる。その後、リクルートへ戻らず、転籍することを選んだのだ。
「私には何が向いているかと考えたとき、未開拓な分野やあまり型が決まっていない仕事の方が自分の強みを発揮できるかなと。派遣業はこれから伸びる分野であり、うちもまだまだ市場でシェアをとれていなかった。だから、ここで頑張る方が自分にとって向いているように思えたのです」
当時は雇用者全体に占める派遣社員の割合は1%弱であり、まだ多くの企業が受け入れている状況ではなかった。リクルートスタッフィングでは、事務・営業・販売・IT技術職への人材派遣はじめ、人材紹介、アウトソーシングを展開。都心型のオフィスワークへの派遣がメインで、女性の登録が8割以上を占める。平田さんも自身の経験を活かし、仕事に楽しさを見いだしていった。
「私は人に興味があるということに気づきました。派遣業の面白さは、年齢も職業も幅広い人と関わること。20代から60代、70代の人も働いています。そしてもう一つは、派遣スタッフへの就業フォローがあります。派遣は仕事を紹介して終わりではなく、実際に働く中でいろんな問題が起きたり、悩んだりする人に寄り添うことも大切です。非常に泥臭く、リアルな世界ではあるけれど、やりがいを感じられたのです」
時間と場所の制約がない働き方を支援。販売職の転換サポートも
2019年度に実施された人材派遣協会のアンケ―ト調査によると、「現在派遣で働いている」と回答した人の約84%が正社員経験者。派遣で働く理由としては、「働く時間や時間帯を選べる」「勤務地を選べる」が上位を占めていた。
「やはり時間と場所の制約がない働き方をしたいという人が多いですね。正社員は残業が多かったり、自分の仕事以外もやる、無限定な働き方のイメージがあるけれど、派遣は仕事の範囲も比較的明確で時給の契約で働いており、自分の仕事が終わったら帰っていいとか、仕事の範囲を明確にするジョブ型です。正社員のときは本当に疲れ果てていたので、結婚したら残業しないで夫のために夕食を作りたいという人。子どもを保育園へ迎えに行くため定時に退社したい人。あとは習い事をしたり、資格の取得を目指していたり、バックグラウンドもさまざまな方がいます」
平田さんが担当していた「キャリアウィンク」では、主に販売職の人が事務職へ転換するためのサポートをする。正社員であっても販売職はシフト制で働くことが多く、新卒2年ほどで店長を任されても激務に追われて、キャリアを築きにくいという悩みを抱えている人が多かった。そうした人たちに事務スキルを身につけてもらい、リクルートスタッフィングの社員(無期雇用派遣スタッフ)として事務職への就業を支援する仕組みだ。
「さらにITスキルを身につけてチャレンジしたいとか、将来的なキャリアを見つけられたという声がすごく嬉しかったですね。あとは自分の生活が充実したという声も多くて、本人の幸せ度が増したという話を聞くと、この仕事をやっていてよかったなと」