孤独を癒やす特効薬は「共感」と「ほめ言葉」
あらゆる方策を駆使して、子どもの手がかかる時期を乗り切った郷田さん。しかし、家庭をひとりで回している気分に陥り、孤独を感じた時期もあったといいます。なかなか特効薬がない“孤独”を癒やしたのは何だったのでしょう?
「やっぱり、共感してくれる人が周りにいることが大きかったと思います。保育園の前に公園があって、そこで子どもたちを遊ばせているうちに、ほかのママたちと仲良くなりました。『こんなことがあったんだよ』『腹立つ~』みたいな話をするたび、『ひとりじゃない!』という気持ちになれました。『うちの子とお出かけするから、(郷田さんの子どもの)お姉ちゃんの方は一緒に公園に連れていくよ』なんて言ってくれるママ友もいて、下の子の手がかかるときは相当助かりましたね」
家事代行も大きな支えになりました。仕事の帰りに子どもたちを迎えに行き、ぐったり疲れて帰宅したときに家がピカピカになっているのは、「本当にほっとした」といいます。
「それから、家事代行に来てくださった方が、いつも『あなた、頑張ってますよ』とほめてくださって。その言葉には想定外に救われていました。だから今、街で小さな子どもを連れているお母さんを見ると、『よく頑張ってるねー』と駆け寄って抱きしめたくなっちゃいます(笑)」
暮らしやすい街・北九州市
北九州市という街も、孤独を癒やす温かさがあるようです。
「市外の方から見ると、北九州市って暗くて怖そうなイメージがあるかもしれません。元々工業地帯で、今は寂れているとか、成人式が荒れるとか。でも実際は全然そんなことはなくて、昔ながらの人間関係の温かさみたいなものが残っているんです。子どもを連れて市場で買い物をしていると、八百屋さんでヤクルトをもらって、自転車屋さんでもなかをもらって、いつの間にかおやつセットがそろっている、みたいな(笑)。地域コミュニティが機能しているんだなと感じます」
お話を聞くうちに、北九州の暗い、怖いといったイメージは、「暮らしやすい」というイメージに塗り替わっていきました。実は北九州市、2020年に実施された「住みたい田舎ベストランキング」の「子育て世代が住みたい田舎部門」で鳥取県鳥取市に次いで2位にランクイン(※)。さらに、NPO法人「エガリテ大手前」が実施している「次世代育成環境ランキング」では、9年連続政令指定都市第1位に選ばれている「子育てしやすい街」なのです。
「東京の友達は、子どもを2人連れて電車に乗ろうとすると、子どもと手をつなぐので両手がふさがるし、荷物もあるし、身動きが取れず大変だと言っていました。その点、北九州市は車社会なので、外出の帰りに子どもが寝てしまっても大丈夫。海も近くて、車で30分も走れば海水浴場ですし、会社の前でアジを釣っている人もいたりするほど。市内を走る高速道路も整備されていて、職住近接がかないます。実は暮らしやすい街ですよ」