勘違いを減らす方法2つ
どのようにすれば、この勘違いが減っていくのでしょうか。ダニングとクルーガーは、論理的問題のできが悪い人に、その問題に関する教育をしました。その結果、教育を受ける前より、教育を受けた後の方が、実験の成績や、自分の成績の順位について、正しく予測することができるようになったのです。
これは、実際に自分のその分野に対する能力が上がることで、その能力に関するメタ認知力が上がることを示しています。実際、やる内容を理解できていない時の方が、「自分はなんとなくこれができるかも」などと安易に自信を持って考えてしまい、逆に知れば知るほど、「自分ではできないのでは……、ここはむずかしいのでは……」と、メタ認知的な理解も深められるのです。
つまり、知識を深く得る努力を怠らないこと、他者からのフィードバックを得るなど自分の客観的評価を知ること、それらを心がけることが、「勘違いした人」になるのを避ける方法なのです。
とくに、この、ダニング・クルーガー効果の話を聞いた時に、「こうゆう人ほんといるよね」と、他人の顔だけを思い浮かべ、自分のことを振り返らなかった人も要注意の可能性があるかもしれません。
<参考文献>
・ Dunning,David, 2011, The Dunning-Kruger Effect: On Being Ignorant of One's Own Ignorance, Advances in Experimental Social Psychology, vol.44, pp.248-296.
・ Kruger, Justin and Dunning, David, 1999, Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One's Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments, Journal of Personality and Social Psychology, vol.77, no.6, pp.1121-1134.
・ Gibbs, Shirleya, Kevin Moore, Gary Steel and Alan McKinnon, 2017, The Dunning-Kruger Effect in a Workplace Computing Setting, Computers in Human Behavior, vol.72, pp.589-595.
・ McIntosh RD, Fowler EA, Lyu T, Della Sala S. Wise up: Clarifying the role of metacognition in the Dunning-Kruger effect. J Exp Psychol Gen. 2019 Nov;148(11):1882-1897. doi: 10.1037/xge0000579. Epub 2019 Feb 25.
内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。