「部長ならできます」
NPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表理事がこんな話をしてくれました。「NPOを手伝いたいという人が来るのですが、『何ができますか?』と聞くと、ちょっと考えて『部長ならできます』というのです」。笑い話ですが、怖い話です。これではNPOの方も困ってしまいます。
社内に特化したスキルを「汎用性のあるスキル」(ポータブルスキル)に転換できる人はいいのですが、日々目の前の仕事に追われていると、転換することは意外と難しい。「社会人が大学院に行くと、自分の仕事で培ったスキルを、理論的に体系立てて整理することができる」と言います。
目の前の仕事を離れて学ぶことで「社内特化型スキル」が「ポータブルスキル」に転換できるわけです。そもそも日本企業で転職せずにやってきた人は機会を与えられないと、自分のキャリアやスキルを「整理して」「言語化する」ことが苦手です。
おじさん活躍推進が必要
日本型組織がみずから生み出した存在を悪者扱いするのは、あまりに無責任ではないでしょうか。
人的資源管理を専門とする中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)の佐藤博樹教授は、「会社が、仕事中心の規格化した人材を育てた。追い出すのではなく、キャリアを考える機会を与えるべき」と話していました。私も同感です。おじさんをおじさんにしたのは会社なのだから、企業が責任を取るべきではないでしょうか?
経営者の多くは、「おじさんたちを解雇したい」というのが本音だと述べました。政府の有識者会議でも、「解雇規制を緩和し、一定の金額を支払えば企業が労働者を解雇できる『金銭解雇』を合法化してほしい」という声が企業の経営者から必ず上がります。