空港からバスで3時間の隔離ホテルへ

次は中学生のお嬢さんとニュージーランドに帰国したりんみゆきさんの話です。ニュージーランドも「14日間のホテル隔離」が必要ですが、彼女が連れて行かれたのは思いもよらぬ場所だったようです。

ホテルのまわり。面会禁止、フェンスは布で覆われ中が見えないようになっている。
ホテルのまわり。面会禁止、フェンスは布で覆われ中が見えないようになっている。(写真提供=りんみゆきさん)

「2020年8月末にオークランド空港に到着したのですが、ホテル隔離のために連れて行かれたのはバスで約3時間かかるロトルアという温泉地でした。どのホテルになるのかは指定できず、到着地のオークランドになる場合もあれば、1時間離れたハミルトン市もあれば、隔離者専用の飛行機に乗って約1時間のクライストチャーチに連れて行かれることもあるようです。ただしどこのホテルでも、隔離後は現地解散もできますが、オークランド空港へも無料で連れて帰ってくれます」

費用はオーストラリア同様の自己負担です。

「どのホテルでも同額で、大人1人につき3100ニュージーランドドル(約23万円)。同室の場合大人1人の追加料金が950ニュージーランドドル(約7万1000円)、子どもは3~17歳まで475ニュージーランドドル(約3万6000円)で、それ未満の子は無料です」

子どものケアパッケージ(子どもが快適に過ごせるためにと、入室時に部屋に置かれていたもの)。日記帳や文房具、本のほかに、学年にあわせた教科書も入っている。
写真提供=りんみゆきさん
子どものケアパッケージ(子どもが快適に過ごせるためにと、入室時に部屋に置かれていたもの)。日記帳や文房具、本のほかに、学年にあわせた教科書も入っている。

メンタルヘルス対策も

食事はオーストラリア同様、3食ともホテルから提供されます。

「ベジタリアンとノンベジタリアンの選択のみしかありませんでした。昼食と夕食はメインのほか、サラダとデザートもついてきます。また有料になりますが、アルコールは1日に大人一人につきワイン1本、ビール3本までオーダーできます。スーパーマーケットやウーバーイーツのデリバリーサービスも個人負担で利用することができますが、フロントで中身をチェックされ、アルコール類と刃物類は抜き取られ、チェックアウトの時に返してもらえることになっていました」

ベジタリアンとノンベジタリアンのランチ。これにパンがつく。サラダは同じ、キヌアとビートルート。食事はおいしかった。
ベジタリアンとノンベジタリアンのランチ。これにパンがつく。サラダは同じ、キヌアとビートルート。食事はおいしかった。(写真提供=りんみゆきさん)

隔離中は鬱になるなどメンタルヘルスが悪化する可能性もあります。アルコール類の提供量を制限するのは、飲みすぎで余計鬱状態にならないように、刃物類の抜き取りは自殺や自傷行為の防止のためでしょう。

「基本的に部屋を出ていいのは、廊下の端にある巨大ゴミ箱へゴミを捨てに行くときと、3日目と12日目の検査を受けにロビーに行くときだけです。ホテルによっては駐車場で運動をしていいところもあって、私たちのところもそうでした。ただしいつでも軍人の見張りつきですが」

部屋のドアの外へは足を出すくらいしかできないオーストラリアと比べて、ほんの少しですが自由はあるようです。

「毎朝防護服姿の看護師1人と軍人1人がペアで部屋に来て、検温を受け、喉が痛くないか、咳はしていないかの問診があります。このときは部屋の中にいてもマスクは着用。隔離でメンタルヘルスが悪化しないかもかなり気にしていて、精神的に大変なことがあったらいつでも相談してくださいと繰り返し言われました」