対策もサポートも徹底している諸外国
以上、4つの国と地域の「入国者隔離」を見てきました。
どの国にも共通しているのが必ず「ホテルなどの指定施設」で「警察や軍の監視の下」強制的に隔離すること、そしてそこまでの送迎も「被隔離者専用の交通手段」が用意されていることです。
これらだけ見ても、日本の「自宅や知人宅でも可」「移動手段は自分で確保」という入国者隔離がいかに抜け道の多いものであるかがわかると思います。抜け道があればそこを通りたくなる人もいるもの。実際、成田空港から入国してそのまま鉄道の駅に向かう人もかなりいるといった報告もときおり見かけます。
一応の基準は作るけれども、その運用は適当で自主性任せ。「自粛」の「要請」というなんともあいまいなことばかり続けている日本政府のコロナ対策のずさんさが、ここにも表れている気がしてなりません。
タイの東里さんがまとめてくれたように、各国政府の対応は厳しい反面、メンタルヘルスへのケアも十分なされています。公共の福祉のために制限するべきところは制限する。でも必要なサポートは最大限にする。それが政治というものではないかと私は思います。
またユニークだと思ったのは、到着した空港からかなり離れた場所での隔離もあるという点。オーストラリアのゴールドコーストは日本でも有名なビーチリゾートですし、ニュージーランドのロトルアも温泉地として有名ですが、コロナの今、旅行者は激減しているでしょう。「Go to トラベル」のようなキャンペーンをするのではなく、タイの「ゴルフ場付きリゾート」のような事例も含めて宿泊施設に被隔離者をふりわければ、感染拡大も防げて、宿泊施設もうるおうことになるのではないか。
外国に素晴らしい制度があれば、積極的に取り入れる。そんな日本政府であってほしいと私は思います。
世界100カ国300人以上のメンバーを誇る現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『ビックリ!! 世界の小学生』(角川つばさ文庫)など同会のメンバーの協力を仰ぎ、各国の状況を比較した著作を得意とする。「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)、「ちゃぐりん」(家の光協会)など、月刊誌などで各国持ち回りのリレー連載も多数手がける。1999年よりオーストラリア・ブリスベンに在住。