「イクボス」でなければ出世できない!?
まず年度初めに上司は「イクボス宣言」というアクションプランを考え、朝礼や会議で発表を行わなくてはならない。このアクションプランには、上司が込めた思いや背景などを掲示し、全職員が閲覧できるようにイントラネットに掲載することになっている。そして月に1回「イクボスの日」を設け、見直しや修正を行うことになっている。さらに「書いて終わり」にならないよう、それが本当に達成できたのかを所属の全職員が確認、回答するという「イクボス度調査」も行っている。
それだけではない。その調査の結果は所属長としての評価にも反映されるシステムになっているのである。つまりオジサンが「イクボス」かどうかは昇進にもかかわってくるのだ。
こうした地道で、粘り強い取り組みにより、明治安田生命では2020年には女性管理職登用率30%の目標を達成している。このように、今や女性活躍優良企業とされる企業では、「オジサン」の目に見えない「意識」を変えることに対し、現場任せにすることなく、「あえて制度化」することで、計画的に、ただならぬ本気度と地道な努力で取り組んでいるのである。
森喜朗発言を男性も女性も問題視していることは大きな前進
今回、森氏がトップの立場でありながらオフィシャルな場で女性差別的な発言をしたことが、言わずと知れた問題となっているわけだが、言葉にこそ出さないものの、会社の中にはいまだこうした意識を持つオジサンが多く存在している。そして、恐らく「森喜朗のようなオジサン」はどの社会にもいるのだろう。
しかし今回の発言に対し社会がこれだけ問題として取り上げていることは、日本の女性活躍推進に向け、大きな前進であると私は捉えている。これまでのように、一部のフェミニストやジェンダー問題専門家だけではなく、そして女性だけでなく男性も、森氏の発言に違和感を持ち、問題視して声を上げているのである。オジサンの意識改革が一部の先進的な大企業の取り組みにとどまらず、社会全体で変えていこうとの意識や流れに変わってきていることに明るい兆しを実感している。
立正大学経営学部 非常勤講師。1977年 東京生まれ 明治大学商学部卒業。学習院大学修士課程修了(経営学)。学習院大学博士課程単位取得満期退学。専門は「人的資源管理論」。二男一女の母。大学院に通い、研究所に勤務しながら3児を妊娠、出産。その20年間に学会発表、論文投稿等の研究を継続し、現在は経営学部で講義・ゼミ指導も行う。