女性活躍に反対するオジサン3つのパターン

彼らは①「女性にそんな大きなプロジェクトを任せたら家庭のこともあるのにかわいそうだろう」という親切心(のつもり)の場合もあるが、②「女性にできるはずがない。女性がいなくてもうまくいっていたのだからその必要はない」と過去の成功体験にしがみ付くオジサンも多くいるという。彼らはリスク回避という意識で女性排除を正当化したり、「6割の女性が出産を機に仕事を辞める」といった過去のデータに基づいた「統計的差別」によって合理的判断として正当化する場合もある。

また③「自分たちの立場が侵される」という無意識の脅威から反対しているオジサンもいるという。たとえトップダウンで会社としての意思決定があっても、そして現場にその意欲があっても、その実現には内部の「偉いオジサン」たちの意識改革が不可欠であるというのである。

オフィスでコーヒーを飲みながらタブレットを使用する男性
写真=iStock.com/Yagi-Studio
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今回、森氏はトップの立場でありながら、女性活躍の重要性を認識していなかったことの問題もあるが、83歳という高齢により「これまで女性がいなくてもうまくいっていた」という過去のあまりにも長い成功体験が、女性蔑視ともされる発言につながっていたのではないかと考えられる。

現状の「女性管理職」は社内で誰もが知るような稀少な存在

一方で今回の事態は働く女性側の現状も映し出している。森氏の「女性っていうのは優れているところですが競争意識が強い。誰か一人が手を上げると、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです」という発言に関してであるが、これには女性を取り巻く世代構造的な現状も表していると考えられる。

1985年に男女雇用機会均等法が制定され「キャリアウーマン」の誕生を社会が期待したものの、その均等法世代が管理職の年になった頃には、期待したほど女性管理職は誕生しなかった。その背景には、当時は職場の理解も両立支援も十分に整っていなかったことがあるが、そうした状況を経て今、管理職に就いている均等法世代の女性は、大変優秀で、タフな人材であることが多い。

例えば先日発表されたインタビュー調査によると、キリンホールディングスでは、現在女性で管理職に就いている社員もいるが、彼女たちは社内で誰もが知る存在であり、まだ稀少である現状がある。同社は、女性管理職の「ロールモデルが少ない」という問題を抱えているが、同時に現在管理職に就いている女性たちが極めて優秀な社員であるため、多くの女性社員は逆に「あそこまではできない」と委縮してしまうのではないのかという懸念も抱えているという。つまりそれほどまれで優秀なのである。