緊急事態宣言解除で満員電車が復活

労働意識の研究などでたびたび指摘されるのは、労働はカトリックにおいて「罰」であり、プロテスタントにおいては「自己実現」であり、仏教においては「崇高な奉仕」、儒教においては「美徳」である、との根本の労働観の違いだ。

否定しがたく儒教的倫理観どっぷりの日本社会では、「働く」とは集団の中で協調しながらあなたも私も仲良く幸せに、という田植え~稲刈りのサイクルなのだ。1度目の緊急事態宣言解除後、あっという間に人々が満員の通勤電車やリアルな会議室へと戻っていったのは、集団の協調が取りづらいテレワークは「生産性が低い」「コミュニケーションがしにくい」と感じた日本人が多かったことにもよる。

日本にテレワークカルチャーが根付くかどうかは、一つは日本人が「対面でないコミュニケーションの低い温度感に慣れること」、もう一つは「密でリアルな、満足のできるコミュニケーションをオンラインで再現できる技術が安価に普及すること」にかかっているかもしれない。

河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト

1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。