➌組織
社内に時短利用者の人数が少ないうちは前述の2つで現場は回るが、人数が増加し「配慮の限界」を超えると、サポートする側に対する報酬や評価など、企業の人事制度の変更が必要となる。企業によっては、両立支援制度利用者の仕事をカバーする同僚に対してボーナス時などに報酬を出す(専門商社)、また毎月の報酬に「育児サポート手当」を上のせする制度(レリアン)などがある。
しかしこれも根本的には対症療法であり、最終的には働き方改革で「残業の常態化の改善」、そして「フレックスタイムとテレワーク」で、時短勤務者の早期フルタイム復帰を図るなどの施策が必要となってくる。
組織全体で、仕事の時間と場所を柔軟にすることで、時短対象者以外もワーク・ライフ・バランスを確保できることがコンフリクト解消の一番のカギとなるのだ。
コロナ禍で進む柔軟な働き方がカギを握る
例えば、カゴメは長時間労働を厳しく是正し、コアタイムなしのフルフレックス制を導入して、管理職でも午後3時に退社するなどの柔軟な働き方を可能にした。
「勤務時間の自由度が高くなったことで、フルタイムで復帰して働くことができるようになった、という声を聞きます」(カゴメ常務執行役員CHO・有沢正人氏)
男性からの「女性だけが制度を使う」という愚痴もなくなったという。
時短勤務の利用拡大は、女性の就業継続には貢献しているが、女性管理職の増加や性別役割分担の解消には逆効果という側面もある。
テレワークも含め、コロナ禍で急速に進んだ柔軟な働き方こそが、個人にとっても組織にとっても無益なコンフリクト解消の要となるだろう。
インターネットでのアンケート調査(委託先:インテージ)を実施。対象は、過去3年以内に時短勤務者と働いた経験があり、自身は現在両立支援制度を使っていない20~49歳の非管理職、正社員、男女各150人。期間は2020年6月19~22日。
1961年生まれ。「働き方改革実現会議」など政府の政策策定に参画。婚活、妊活の提唱者。著書に『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP研究所)など多数。