ハンパない“暖簾に腕押し感”の正体

原因としてはもうひとつ、コミュニケーション力不足も考えられます。そもそもコミュニケーションとは双方向であるべきもの。でも、一昔前の上意下達の風土の中で評価されてきた人たちは、上から下へと一方通行のコミュニケーションに慣れていて、たとえ上司から返事がなくても意を酌める人が有能だと考える傾向にあります。

部下が「暖簾に腕押し」と感じてしまう原因もここにあります。こちらから提案しても向こうからの回答が伝わってこないわけですから、コミュニケーションが双方向でないのは明らかです。上司側が「意を酌むべきだ」と思っていても、世代が違う部下側からすれば無理な話。これでは、部下としては「相手にされていない感」が高まるだけになってしまいます。

風にたなびくのれん
写真=iStock.com/kanzilyou
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では、コミュニケーションを双方向にするにはどうすればいいのでしょうか。上司は双方向であるべきだとは思っていないわけで、そうなると部下の側から誘導してあげる必要があります。

提案前に必ず伝えるべきこと

そのためには、まず自分がなぜ上司と話をしたいのか、動機を明確にしておいてください。たいていの人は、次の3パターンのどれかに当てはまると思います。

(1)単に話を聞いてほしい(指示や評価は求めていない)
(2)企画提案の出来を評価してほしい
(3)解決策を示してほしい(知識や経験を基にした助言がほしい)

動機が明確になったら、上司と話す時、最初にそれを伝えましょう。人間は「これが私のニーズです」と提示されると、何とかして回答しようという気持ちになりやすいもの。この会話が向かう先はどこなのか、あらかじめ前提を共有して、上司を“答える姿勢”へ誘導してあげるのです。

「言わなくてもわかるだろう」は通用しないことに気づかせる

上司が答える姿勢になれば、回答のパターンも変わってきます。暖簾に腕押しと感じるのは、回答がまったくないか、あっても「検討する」などの1パターンだけだから。他の回答パターンを引き出せれば、また違う角度から質問をしたり次の提案につなげたりと、双方向のコミュニケーションが可能になってきます。そうなれば、暖簾に腕押し感は減っていくのではないでしょうか。

こうしたコミュニケーションを続けていれば、上司の中には双方向の重要性を理解する人も出てくるはずです。これまでの「わざわざ言わなくてもわかるだろう」という姿勢が通用しないと気づき、部下が自分に何を求めているのか、会話から酌みとろうとしはじめるかもしれません。これからの時代、上司にはぜひそうあってほしいものです。