ピンチをチャンスに変える発想の転換で生き残る

歴史から見えてくるのは、感染症やバブル経済崩壊が起きると「病に倒れる人は倒れ、つぶれる企業はつぶれる。そして、生き残ったものが新時代をつくる」という客観的な事実です。では、今、新型コロナショックの真っただ中にある私たちが、倒れたりつぶれたりしないためには、どうすべきなのか。

重要なのは、すべては変化するものだと覚悟し、パニックにのみ込まれない冷静さを持つことです。社会の急激な変化を悲観的に捉えるのではなく、新しい時代が始まるチャンスと考えてみてください。

今回のコロナ禍により、いらないものや無駄な習慣が見えてきたはずです。「今の社会や自分自身に、本当に必要なものは何か」をしっかりと見極める目を持ち、「コロナ後」に向けて今から準備しておくこと。それが自分の武器となり、「新しい価値」を生み出す原動力となっていくはずです。

コロナ禍による世界の行く末は、まだまだ混沌こんとんとしています。米中対立の激化、近い将来に到来するであろうアフリカの時代など、歴史はさらに激しく動いていくでしょう。

時代の転換期をリアルに生きる私たちが新型コロナ危機をどう乗り越え、新しい未来を切り開いていくのか。まさに、今、歴史に試されているといえるのです。

Topic1 宗教を生んだ感染症の歴史

現代の宗教のルーツは古代の疫病にあった

世界の危機の歴史

宗教の誕生は感染症の歴史と深く結びついています。原因もわからないまま人が次々と死んでいく疫病の流行は民衆をパニックに陥れ、宗教のモラル崩壊を引き起こしました。

強大な権勢を誇ったローマ帝国で起きたアントニヌスの疫病(天然痘)では、人口の10%にあたる約500万人が死亡。ローマ帝国の衰退が始まり、人々から古代ローマの神々への信仰心を失わせました。

そこに台頭してきたのが、当時は新興宗教のひとつにすぎなかったキリスト教です。キリスト教徒は死後、神の世界に行くことが真の幸福と考えて死を恐れず、病人を教会などで献身的に介護します。その姿は「疫病から救ってくれない」ローマの神々に絶望していた民衆の心をしっかりとつかんだのです。

同じように、中国でも疫病をきっかけに仏教が爆発的に流行していきました。日本の神道の確立にも、崇神天皇時代の疫病が大きな影響を与えています。このように古代の疫病は、現代に続く世界宗教が拡大する大きなきっかけのひとつとなっているのです。