休んだほうがいいのにズルズル働いてしまう現代人

伊是名さんは座っている姿勢が体によくないため、時間があれば5分でも横になって、自分にやさしくしているという。しかし、ふつうに社会生活を送っていると、休んだほうがいいとわかっていてもズルズルと働いてしまう。どうすれば自分を大切にすることができるのだろうか。武田さんは次のように話す。

「まず赤ちゃんとして生まれて、家庭や学校で周りにやさしくする、周りのニーズを満たすことを学びながら大きくなっていきます。日本では、それがいいこととされているので、自分を置いてきぼりにして、周りの期待に応えていく生き方になりがちです。その状態で社会に出ると、あるところまでそれなりにやっていけるけれど、自分をないがしろにして周りに応えていると、いずれ行き詰まります。『会社にいけなくなる』『人間関係でトラブルを繰り返す』といった行き詰まりが起こったときが、自分を大切にするための第一歩です」

「成果を出すことで居場所を確保する」ことからの脱出

自分を大切にする方向に大きく舵を切るために必要なエンジンが二つ。

「それは『もう、こんなのイヤだ』と『もっと自分のために生きるんだ』というものです。今まで自分をないがしろにしていた人が自分を大切にするまでって、惑星から脱出するようなものです。『成果を出すことで自分の居場所を確保する』という根本的な価値観は、幼い頃からの蓄積で、それはもう星の引力みたいなものですから、ものすごくエンジンをふかして、もうイヤだ! ってならないと、なかなか脱出できない。その脱出を手伝うのがカウンセリングかなと思います」

伊是名さんが周りにうまく頼ることができたのは、入退院の経験を通して、つながろうとしないとつながれないという究極の状況があったから、つながれる側にいけたのでは、と武田さんは分析する。