アメリカをはじめとする各国政府は現在、債務を逃れるために紙幣を刷り続けている。この状況は世界経済に対して、いずれリーマンショック時より何倍も大きな打撃を与えるはずだ。この影響は長期にわたり多くの人を苦しめることになるだろう。リーマンショック後にも世界の中央銀行が金融緩和をしたが、今回の規模は当時よりもずっと大きい。

栄えているアメリカを将来見ることはないだろう

そもそも、コロナショック前でもアメリカは世界最大の債務国だった。そこから数兆ドル単位で債務が増え続けていて、アメリカの若者に未来はない。私の娘たちは17歳と12歳だが、彼女たちは栄えているアメリカを将来見ることはないだろう。とてつもない額の負債がさらに膨れ上がり、返済するあてもないからだ。いずれは金利が急上昇するだろう。そうなればアメリカのいくつかの都市、州、そして下手をしたら国が破綻してしまうだろう。

――世界的な財政出動については楽観的な意見もあります。

こういった危機的状況に陥ると皆が「簡単な」解決策を見いだそうとするものだ。最近はMMT(Modern Monetary Theory)理論(現代貨幣理論)という言葉を聞く回数が増えた。現代貨幣理論とは、独自の通貨を発行している政府は決して破綻することはないという理論だ。しかし、私にはこれは「Modern Monetary Theory」ではなく「More Money Today」の略にしか思えない。

投資家 ジム・ロジャーズ氏
投資家 ジム・ロジャーズ氏

イギリスや日本など、アメリカ以外の中央銀行の対応もまるで同じだ。しかしこれは明らかな間違いで必ず失敗するだろう。多くの人はMMTにより世界が救われると勘違いしているのかもしれないが、これは将来的には事を悪化させるだけであり、若者の未来が失われる。

日本のせめてもの救いは完全に経済を閉ざさなかったことだろう。ウイルスでレストランを閉じることなんて今まで聞いたことがなかった。都市を封鎖したことで、経済はさらに、私が見てきたどの危機をも上回るダメージを受けるはずだ。

――現在の相場をどのように見ていますか?

コロナショックで下落した株式は、各国の膨大な財政出動によって早い時期に反発した。しかし債務は何兆ドルも増えた。歴史的にも国が莫大ばくだいな債務を抱えると必ず悲劇が訪れるものだ。特に株式相場が過熱した場合、暴落は必ずやってくる。

ただし崩壊は今日明日というわけではない。株式相場の過熱からのバブル崩壊には時間がかかるものだ。なぜなら相場に勢いが生まれており、株価に興味を持つ者の心理が過熱して買い続けるからだ。