「異常」から「あたりまえ」へ、認識を新たに
後はどう売るかが問題だった。
製品が良くなっているのに売上が数%増にとどまっている原因は、認知不足だ。ライダーや妊婦さんや登山家が発見してくれたワークマン製品のよさを多くの人に伝えていくにはどうしたらいいか。
そのためには意識を変える必要があった。自分たちの高機能製品が一般のお客様に売れるのは「異常」ではない。「あたりまえ」なのだ。そう認識を新たにした。
その「あたりまえ」を広めるために新業態を立ち上げることにした。
ワークマンプラス第1号店の店内は既存のワークマンのイメージと異なり、一般のお客様を意識し、おしゃれなアウトドアショップのようにした。マネキンとスポットライトを多用し、製品陳列を見やすくしたので、ほしいものがすぐ見つけられる。ワークマン自体を知らない人は、作業着をメインに扱っている会社だとは気がつかないだろう。
ショッピングモールへの出店は多大なコストがかかるが、広告塔としての役割を果たすと思い決断した。
おしゃれな店舗は女性客の伸びにつながった。一般のロードサイド店の女性比率は2~3割にもかかわらず、ショッピングモール店では約5割にも達した。
年齢的にも若返りができた。かつてのワークマンのお客様の大多数は中高年者であった。ワークマンプラスのショッピングモール店では、40歳以下のお客様比率が休日は4割を超えている。
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。著書に『ホワイトフランチャイズ』(KADOKAWA)がある。