どうしても自分が優位なときの対処法
注意しなければならないのは、こちらが優位に立ってしまったときだ。なにか成果をだしたとき、昇進が決まったとき、上司からホメられたときなど、こちらがあからさまに優位に立ってしまったときが要注意となる。このタイプは、身近な人物の成功によって比較意識が強まり、いじけたり攻撃的になったりしやすい。
そのようなときは、気まずくならないように自虐ネタで茶化すことにしているという人がいる。それはとても賢いかわし方だ。自虐ネタによって、むこうはこちらをバカにするかのように笑うことができ、「勝ち――負け」の図式において、こちらを引きずりおろすことができる。むこうは自分が優位に立っていないと気がすまないのだが、こちらが劣位を装えば、気持ちに余裕ができ、攻撃的にならずにすむ。それどころか、結構いい人でいられたりする。自分のほうが上だと思えば、気持ちに余裕ができ、とても親切な人になったりする。たとえば、自分のほうが実力があり、どうしても優位に立ってしまいがちなため、なにかにつけてドジ話をするのに加えて、いろいろと相談したりして頼ることで身を守っているという人もいる。これは、とても有効なかわし方といえる。
こちらが嘆いたり、自嘲気味なことをいったりしながら相談することで、むこうは自分の優位を実感でき、気持ちのうえでおおいに余裕ができる。その結果、攻撃的になるどころか、こちらに同情し、上から目線ではあるもののアドバイスしてくれたり、けっこう親切にしてくれたりするものだ。むこうが上から目線になれるように導くのが、ややこしい対抗心からわが身を守るコツといえる。
1955年東京生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て、現在、MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)、『「やりたい仕事」病』(日経プレミアシリーズ)、『「おもてなし」という残酷社会』『自己実現という罠』『教育現場は困ってる』『思考停止という病理』(以上、平凡社新書)など著書多数。