自己肯定感が高ければいいわけではない
自己肯定感が高い、と一言にいっても、そこには2種類あることがわかっています。これは前頁の自分への評価の仕方とも通じるのですが、自己に価値があると思う感覚が、社会的な成功や失敗による他者からの評価に依存している「随伴性自己肯定感(Contingent Self-Esteem)」では、安定したwell-beingは得られないことがわかっています。「真の自己肯定感情(True Self-Esteem)」とは、周囲によって変動することがなく、本来の自己によって自分が機能しているという感覚から得られるものです。
このため、何かを演じたり、何らかの秀でたパフォーマンスを上げなくても、ただありのままの自分を認めてくれる無条件の他者からの肯定的配慮が必要とされています。その意味では、自己肯定感が低い人に、「あなたはもっと自信をもつべき」という諭し方がいいわけではないことがわかります。
また、よくやりがちなのですが、自分の基準で測って他者をほめる、という条件付きのほめ方がよくないこともわかります。親子や夫婦間でも、ありのままに他者を受け入れることが難しいときがあります。
まずは、自分が身近な人をありのままに受け入れること、そして客観的に正しく自分を知ろうとすることが、正しい自己効力感を高める第一歩だと言えるでしょう。
<参考文献>
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内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。