母親と同居していた姉が、亡き親の財産を教えてくれない!

【相談者】S江さん・会社員 【相続人】長女、次女(S江さん)
【財産】家、預貯金

1人暮らしの母を同居介護していた姉が通帳もすべて管理していました。母が亡くなったあとに通帳を見せてほしいと言っても「介護で使い果たしたから残っていない」の一点張り。きっと隠している財産があるはず。
ムンクの叫び風のイラスト

身近な人が財産を開示しないために、もめごとに発展するケースです。高齢の親と同居していたお姉さんが、介護費用を含めた預貯金を管理し、親が亡くなっても妹のS江さんに通帳を見せない。S江さんからすると当然、見せてもらえるものであって、残っている預金があれば、自分にも分けてもらいたいと思うわけです。

相続人なら、被相続人が亡くなったことを証明すれば、銀行の取引明細は入手できますので、不信感がつのったS江さんはすべて調べあげました。すると、預金が1000万円ぐらい残っていたのです。結果的に、預金は全部S江さんに渡り、お姉さんは自宅をもらうことに。

この場合、お母さんの介護が始まったときから、預金の明細を姉妹で共有しておくべきでした。S江さんはお姉さんに介護を任せっぱなしにするのではなく、実家にも定期的に顔を出すなどしてコミュニケーションを取り、支出を知らせてもらっておけば、疑心暗鬼にならずにすんだでしょうね。

家族で親と同居。父の亡き後、弟の要求が容赦ない!

【相談者】Y子さん・フリーランス 【相続人】長女(Y子さん)、長男(弟)
【財産】家、預貯金

1人暮らしの父の面倒を見るために、夫と一緒に実家に同居。父が亡き後、私はそのまま家をもらって住み続けるつもりでしたが、別居している弟から「家は譲るので時価評価した分の金額がほしい」としつこく要求されています。

親と同居している人は家をもらいたい、同居していない人はお金を多くもらいたいという、よくある事例です。この弟さんのように知識があって、家を売らないなら路線価よりも高い時価で払ってほしいという人も少なくありません。

仮に「不動産は長女に」という遺言書があれば、不動産の所有はY子さんに確定、弟さんが相続するのは、現金の法定相続分(2分の1)と、遺留分(家の4分の1)のみでした。しかし遺言書がなかったばかりに、家も遺産分割の対象。Y子さんが家をもらうのであれば、時価の半分を弟さんに渡さなければいけません。

お父さんがY子さんに生前贈与する手もありますが、贈与税や登録免許税など、余計な費用がかかります。相続まで待てばこうした費用もかかりませんから、やはり遺言書で指定しておくのが理想なのです。

結局、この姉弟は調停に。家庭裁判所は時価がベースになりますから、Y子さんが弟さんの主張どおり、時価評価でお金を支払い決着しました。

▼遺言書の用意の仕方
1.自筆証書遺言
本人が手書きで作成する(財産目録はパソコン可)。保管は本人だが、法務局で保管も可能。家庭裁判所の検認が必要だが、法務局に預ければ検認は不要。
2.公正証書遺言
公証役場で公証人が作成する。原本は公証役場、正本は本人が保管する。作成手数料がかかるが、家庭裁判所の検認が不要なのはメリット。
3.秘密証書遺言
自分で書いた遺言書を公証役場に持って行き、本人のものであることを明確にして作成する。保管は本人。家庭裁判所で検認手続きが必要。