いざ相続となったときに争いごとが起こらないようにするには、親が元気なうちから、相続は家族の問題として情報を共有し、コミュニケーションを取ることが大切です。
そして、最も有効なのは遺言書。亡くなった人の遺志がはっきりと残っていれば、それが一番の説得材料となり、相続人同士の余計な争いに発展しにくいからです。
ただし遺言書を作成するときは、作ることやその内容を相続人全員に知らせてオープンにしておくことをおすすめします。そうしないと、遺言書の内容が特定の相続人に偏る恐れがあるからです。
相続トラブルよくあるケース
妹がこっそり生前贈与を受けていた! 留学費用も出してもらっているのに法定相続分どおりなのは納得いかない
【財産】家、預貯金
亡き父の相続税の申告の際に、5年前に妹が家を建てるときに1000万円の援助を受けていたことが判明。妹は学生時代に留学費用も出してもらっている。これでも平等に分けなきゃいけないの?
きょうだいの1人に贈与した財産があるのに、それを全員に知らせずあとでもめるパターンです。この場合、M子さんとしては隠されていたのは許せないですし、他にもあるかもと疑心暗鬼になっていました。もともと妹さんは留学費用も親に出してもらっていて、昔から妹ばかりひいきされていたというM子さんのうっぷんが、ついに相続で噴き出したわけです。
やはり贈与はオープンにし、公平にしておく。そして相続時にバランスを取るような遺言書を用意しておくべきでしょう。結局、M子さんと妹さんは調停にすすみ、妹への生前贈与1000万円を財産に加算して遺産分割されましたが、他の贈与は特定されず不問となりました。
ちなみに民法改正で、遺留分の計算の対象になる生前贈与は、相続発生時からさかのぼって原則10年以内のものと限定されたため、たとえ遺言書に不満があっても、何十年も前の留学費用などは認められなくなりました。
遺留分とは、遺言書があっても相続人が最低限取得できる相続分のこと。過去の贈与(特別受益)をどこまで含めるか決まっていなかったため、裁判の際に争点になっていた。2019年7月からは相続発生時からさかのぼって原則10年以内のものに限定された。また、相続人が自身で行使する“遺留分減殺請求”の対象は不動産や株式などだったが、これもトラブルのもとに。改正後は現金での支払いに限定され、呼称も“遺留分侵害額請求”に変更。