親が80代になって認知症気味。もっと早く財産整理をするべきだった!

【相談者】K里さん・派遣社員 【相続人】長女(K里さん)、長男(弟)
【財産】家、預貯金

そろそろ実家の財産を整理しなければ、と思っているうちに、親にもの忘れや理解力の低下など認知症のサインが。どうにか財産を整理して遺言書も作ったけれど、もっと早く取り掛かれば、こんなに苦労せずにすんだかも。

認知症と診断されると、相続人は対策ができなくなります。本人の判断能力が低下し、法定後見人の申請を家庭裁判所に出すと、弁護士など第三者が選任されることになります。通帳も預けてしまい、本人の介護のための出費しかできなくなるのです。

K里さんのように、親が認知症と診断される前に、財産の詳細を教えてもらったり、分け方の案を決めて遺言書を作成しておいたりすることが大切です。認知症の診断前であれば、公証役場で意思確認やサインもできる方がほとんどですので遺言書が作れます。同時に家族の1人を任意後見人に指定してもらい、その人が財産を管理する契約をしておくことがおすすめです。財産が多いときは、その管理を家族間で行う民事信託を活用することも考えておきましょう。

K里さんが言うように、実家の財産整理は早いほど楽。その際は1人でしないで、兄弟姉妹で一緒に行うか、役割分担して情報共有するのが重要なポイントです。

▼親の財産整理の進め方
親と同居していないなら、親が80代に入ったら実家を片付けて、財産を確認しておきましょう。財産の内容は、項目をチェック。不動産なら固定資産税の納付書、預貯金は通帳、株式は証券会社からの通知があればわかります。
ここをチェック!
・不動産
・預貯金
・株式
・投資信託
・生命保険
・金地金
・自家用車、美術品等の家庭用財産
・ゴルフ会員権
・負債

親が離婚して父が再婚。交流がないばっかりに財産はもらえず

【相談者】T子さん・会社員 【相続人】長女(T子さん)、義母、義きょうだい1人
【財産】家、預貯金

10代の頃に両親が離婚し、父は再婚。ほとんど交流はなかったけれど、後妻との間に子どもが1人いたそうです。でも父が亡くなったときは、財産のことは全く知らされずうやむやに。もっと主張すればもらえた!?

離婚、再婚は当たり前の時代。T子さんのように離婚したお父さんが再婚して、後妻との間に子どもができても、T子さんは後妻の子どもと立場は同じ相続人です。しかし、夫が亡きあと、後妻が先妻の子に財産を教えない、何も渡さないなどして、T子さんのようにうやむやにされることはざら。特にしっかりしている後妻だと、生前に自分たちに有利な遺言書を作っていたり、生前贈与でほとんど後妻の財産になっていたり、ということも起こりえます。そもそも遺言書の存在すら知らされず、それで終わることもあります。

そうならないためにも、ふだんから、親と交流を持っておくことが大切です。お父さんと話をして、生前贈与をしてもらっておく、あるいは遺言書で決めてもらえれば安心でした。ただし遺言書があっても、亡くなるまでに資産がなくなり、結果もらえないことも。できれば生前にもらっておいたほうがスッキリするし、後妻の感情にもさわらなくてベターですね。

構成=池田純子 イラスト=ウメムラノリミチ

曽根 恵子(そね・けいこ)
相続実務士

夢相続代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務を経て、1987年に独立。これまで1万4600件以上の相続相談に対処してきた。著書に『いちばんわかりやすい 相続・贈与の本 '19~'20年版』(成美堂出版)、監修に『おひとりさま[老後生活]安心便利帳 2025年版』(扶桑社)など。