なぜ目標管理を失敗する企業が多いのか

実は、当社もOKRを取り入れています。われわれはソフトウエア会社ですから、いかに長くソフトウエアを使っていただくかが重要。ですから、そのソフトウエアに関する知識を共有するイベントをよく催しています。

そこでOは「100%のユーザーに長くソフトウエアを使ってもらう」、KRは「70%のユーザーにイベントに来てもらう」と設定します。そのKRを達成するために、どういうことを仕掛ければいいか、どんなことをすれば喜んでもらえるだろうということを考えて、Oにつなげていくということです。

では、なぜ今この手法に注目する動きがあるのでしょうか。それは、もともと多くの企業が取り入れていた「MBO」(Management By Objective)に課題意識があったからです。

ご存じのとおり、MBOは目標に対して100%の達成を成功とみなし、年に一度評価される人事考課手法です。私たちのお客様も8割が、このMBO方式を採用されています。

OKRとMBO、目標を立ててそれを追いかけていくという点は似ていますが、やはり大きく違うのは「目標設定の仕方」「サイクルの回し方」「透明性」です。

もともとMBOは、100%達成することで評価されるわけですから、どうしても目標を低く設定したり、難易度を下げたりしがち。また評価する側も、点数を高くつけたり低くつけたりすることに躊躇があり、つい真ん中につけてしまう。OKRでストレッチした目標にすれば、こうした評価の誤謬が避けられるでしょう。

またMBOの場合、期初に目標を立てても、その後は日常の忙しさに紛れて思い出すこともありません。期末になってあわててシートをひっくり返して、ああ、こんなことも書いたっけとなりがちです。しかしOKRは月に一回、あるいは3カ月に一回と、クイックに確認のサイクルを回していくので、目標が形骸化しにくい。プロセスの中で、そのつど達成度や課題を確認できるのはMBOと違うメリットです。

最大のポイントは透明性

またMBOでトライしようとしても、なかなかうまくいかないのが透明性です。日本企業では、たとえば研究開発部門が開発中の情報をオープンにすることに、ためらうことが多いからです。

OKRで重要なのは、部署や各自の目標がオープンになっている、隠し事がないという事実です。OKRは、たいてい社内システムで見られます。全員が全員、わざわざそれを見に行くわけではないでしょうが、マネジメント層はどこで何が起きているか把握しやすいのです。

また別の部門に協力を求めるときに、OKRを確認することで、相手の目標がわかれば、そこに合わせて準備することもできます。