長期投資をする人にとって大切なポイント
さらに収益を上げることで大事なことは「ブレ幅が小さくなる」ことではありません。市場全体が右肩上がりで上昇していくことが大事なのです。この傾向線のことを「期待リターン」と言います。期待リターンというのは「自分が期待するリターン」という意味ではなく、過去の運用成績から判断して得られると考えられる利益のことを言います。例えば過去30年間で見れば、途中いろいろ変動はあったものの、日本の株式市場の期待リターンはマイナスでした。ところが過去10年間で見るとプラスということになります。したがっていくら運用成果のブレ幅が小さくても傾向線として下落が続いていたのであれば意味がありません。すなわち長期投資するのは良いのですが、あくまでも期待リターンがプラスの市場で長期投資をすることが大切なのです。
ところが、「期待リターンがプラス」と言ってもそれはあくまでも過去の話であって、今後はどうなるかわかりません。つまり「期待リターンがプラスの市場で運用しなさい」と言ったところで、それが一体どこなのかは、事前には誰もわからないのです。では一体どうすれば良いのか? そこで必要になってくるのが「分散投資」という考え方です。異なる市場や異なる国、そして異なるカテゴリーの商品に分散して投資をすることです。そうすれば長期投資によるメリットを享受することができるでしょう。なぜなら、世界には成長する市場もあれば、低迷する市場もありますが、長期的には世界の人口が拡大を続ける限り、世界経済全体では成長していくからです。
長期・分散・積立は最良の方法なのか
「え? でもリーマンショックの時は世界中の株式市場が一斉に下落したでしょう? だったら分散投資していても意味がないじゃない?」と言う人がいるかもしれません。確かに今後もああいうことが起きた場合、一時的には世界中のほとんどの株式市場が下落することにはなるでしょう。ただ今までに世界的な暴落は何度もありましたが、世界全体で見れば長くても数年で回復してきています。したがって、単なる長期投資でも単なる分散投資でもなく、その両方を組み合わせることが大切なのです。
よく「長期」「分散」「積立」で投資をするのが最も良い方法だと言われますが、私はこれが最も良い方法かどうかはわかりません。ただ、比較的無難な方法であることは確かです。今回は「長期」「分散」についてお話をしましたが、「積立投資」についてもいずれどこかでお話をしたいと思います。
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大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。